韓国の銀行、預貸マージン縮小が不可避に
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権が、債務者の利子負担軽減に向け積極的な動きを見せていることで、銀行の主な収益源である預貸マージン(NIM)の縮小が不可避となった。
新政権の「債務者支援」受け
韓国の銀行は、利鞘商売の手腕を発揮して中小企業への融資を増やせば延滞率が、家計向け融資を増やせば家計債務の急増に対する厳しい社会的視線が懸念材料として浮上する。株価上昇を牽引してくれる「NIM(純金利マージン)」の回復は鈍化せざるを得ないというのが業界の見方だ。
市中銀行は最近、相次いで固定金利型住宅ローンの貸出要件を緩和している。
IBK企業銀行は先月24日、10年固定金利で返済期間は最大40年の「IBK長期固定住宅ローン」を5000億ウォン限度で販売し始め、ウリィ銀行は12日から「アパートローン」、「不動産ローン」、「WON住宅ローン」のうち5年変動金利選択時、金利を0.4%引き下げて提供している。
KB国民銀行は4月5日、住宅ローンの変動金利型と混合金利型(5年固定金利から変動金利に移行)の金利をそれぞれ0.15%、0.45%引き下げたが、変動型より混合型金利をより大幅に引き下げ、金融消費者を固定金利型に誘導している。
固定金利誘導、政府が要求
銀行のこのような行動は、発足と同時に「家計債務の改善」に取り組んでいる新政権と歩調を合わせるためだ。金融監督院は銀行に対し、年末までに固定金利ローンの比重目標値を前年より2.5%高めた52.5%に合わせることを求めた。
しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)の基準金利ビッグステップ(0.5%引き上げ)断行など市場金利の上昇が予告された状況で、固定金利型融資の拡大は逆ザヤ発生のリスクを高める。
銀行は受信と銀行債の発行で資金を調達する。このうち、銀行債は市場金利が上がるほど調達費用がかかる。固定金利融資の比率が高まり、貸出金利の調整ができなくなると、銀行は損失を被ることになる。
ある市中銀行の関係者は「当局が提示した固定金利融資の比重目標値は達成しにくいレベルではないが、金利引き上げ期に固定金利融資を増やしていけば、今後の収益に否定的な影響を及ぼし得る」と述べた。
預貸金利差の公示制も
政府が預貸金利差の公示制の導入を進めているのも銀行にとっては負担だ。金融当局は現在、銀行の過度な利ザヤ商売から金融消費者を保護するとの趣旨で、銀行連合会のホームページに銀行別預貸金利差の現状を公示する方案を議論していると言われている。
預貸金利差の公示制が導入されると、銀行は預貸マージンの算定において政府と世論を意識するようになる。
新型コロナ以降、急激な融資増大で潤った銀行は、再びNIMに神経を使わねばならなくなった。
国内銀行のNIMは、昨年第1四半期の1.43%から今年第1四半期の1.53%へと0.09%上昇した。貸出債権など運用資産の増加と金利上昇に支えられた結果だ。同じ期間の預貸金利の差は1.78%から1.93%に拡大した。
ある市中銀行関係者は、「預貸マージンに対する政府の介入が強まると、銀行間の様子見の戦略によって融資金利を下げざるを得ない状況が発生することになる」と述べ、「この場合、銀行はリスク回避の姿勢を強め、長期的に融資の敷居を高めたり、融資限度を絞ったりするだろう」と話した。
続けて「インフレと不況の余波で銀行株がふるわない状況で、主な利益指標であるNIMの悪化はいっそう否定的な波及効果を起こす可能性がある」としながら、「非利子収益を拡大する新たな競争力を求め、銀行全体の収益性を確保する方向性について悩んでいる」と付け加えた。
アン・ソユン記者