【創刊26周年企画】韓国証券業界、泣いて笑った2021年
[文政権の金融改革5年]クラウドファンディングは低迷
文在寅政権の任期が残すところ7カ月余りとなる中、100大国政課題に含まれた主要金融政策の評価が徐々に出ている。
証券業界は、政府が市場の持続可能な成長を期待してまとめた「改善案」で、泣き笑いの一年を送った。金融産業構造の先進化や庶民の財産形成、金融支援の強化など、国政課題が業界に残した主要懸案とは何か。
文在寅政権は、自由な金融アクセス環境の造成や第4次産業革命にふさわしいインフラ構築基調にあわせ、クラウドファンディングの活性化を推進した。発行企業の範囲や発行限度の拡大により、ファンディングに参加しやすい環境を期待した。だが、クラウドファンディングを募る仲介業者よりも資金を必要とする需要家に注目した改正案は、証券業界に不満を残した。
金融委員会は今年6月、クラウドファンディングの年間発行限度拡大などのための「資本市場法施行令および金融投資業規定」を施行した。2019年にまとめたクラウドファンディング発展方策の後続措置で、健全な市場秩序の確立と投資家保護の強化を図る目的があった。
クラウドファンディングとは、資金を必要とする需要家が、ソーシャルネットワークなどのオンラインプラットフォームでの証券発行を通じて、多数の投資家から資金を調達する方式だ。資金募集および補償方式によって後援型・寄付型・融資型・証券型に分かれる。主にスタートアップ企業やベンチャー企業の初期成長の支援に活用される。
このうち、証券型クラウドファンディングとは、企業がオンラインを通じて投資家を対象に証券を公募発行し、少額の投資金を受け取る形を指す。
改正案では、クラウドファンディングの年間証券発行限度は、従来の15億ウォンから30億ウォンへと2倍に増え、クラウドファンディングの投資対象も大幅に拡大された。中堅企業との共同プロジェクトをより円滑に進めることができるよう、クラウドファンディング・プロジェクト投資に必要な中小企業の収益持分の割合を、従来の70%から50%以上へと緩和した。
しかし、政府のこのような制度改善にもかかわらず、証券会社の反応は腰が引けている。証券型クラウドファンディングは、2016年の導入から2019年まで持続的に成長してきたが、昨年から上昇傾向に歯止めがかかり始めた。
与党・共に民主党の金炳旭(キム・ビョンウク)議員室が発表した「証券型クラウドファンディング発行実績」によると、今年1月から9月までの発行金額は101億ウォンで、昨年同期(226億ウォン)より55%減少した。
年度別に見ると、◇2017年に169社(発行件数180件)に270億ウォン◇2018年に186社(発行件数199件)に317億ウォン◇2019年に191社(発行件数205件)に390億ウォンを支援し、着実に成長してきた。しかし、昨年は137社に279億ウォンを支援するにとどまった。
特に、今年は9月まで54社(発行件数56件)に101億ウォンを支援し、昨年の実績にも及ばなかった。
クラウドファンディングを通じて創出できる収益が少なく、証券会社などの仲介業者の参加が低迷しているからだと見られる。クラウンディングファンディングは、仲介会社が募集金額の80%以上の資金を集めてこそ、約5%の手数料を手にすることができる。例えば、2億ウォンを募集して仲介手数料5%を受け取ったとすれば、仲介業者の報酬は1000万ウォン前後だ。
関連業界では、創業企業の育成は中・長期的な観点でアプローチすべきだという意見が出ている。発行仲介から後続管理まで求められる役割が多い一方、これを通じて得られる短期的な収益は低いからだ。実際、今回の改正案は発行限度とプロジェクト投資事業の対象を増やすなどの内容が骨子であるので、仲介業者の立場では、興味を引かれる誘引策ではない。
さらに、新型コロナウイルスの影響を受け、不確実性も増している。これを受け、株式や仮想資産など投資市場に資金が集中し、相対的にクラウドファンディング市場の人気が下火になったことも原因として見られる。
金議員は「クラウドファンディングは夢を持った企業の可能性を開いて成長の土台を作る役割をするだけに、投資家保護の装置と投資誘引を高められる政策的支援を同時に準備しなければならない」としながら、「企業の成長を支援できる本来の機能を見いだすべきだ」と述べた。
チャイニーズウォール規制を緩和
金融投資業界の宿願とされたチャイニーズウォール規制緩和が実現した。金融投資会社は、チャイニーズウォールの詳細事項を自主的に設計し、運営できるようになり、さらに組織再編を通じて業務の効率性向上に拍車をかけている。
チャイニーズウォールとは、インサイダー取引などを防止するため、企業内での情報交流を遮断する装置で、金融投資業務間の情報提供、役職員の兼職、オフィス・電算設備などの共同利用禁止などの施策を言う。韓国では2009年に法規制として導入された。
しかし、会社の規模や業務の性格などを考慮せず、法令によって直接規制対象や方式を定めており、新規事業の推進を妨げるとの指摘が相次いでいた。
証券会社が新技術投資組合、発行手形などの新規業務を推進する際、企業金融業や投資売買、投資仲介業の多様な業務が混在する。しかし、チャイニーズウォールによって、同一の業務を遂行するにも、さまざまな金融投資業務を分散して遂行しなければならず、それによって不必要な承認手続きを踏まなければならない不便が生じた。
その後、チャイニーズウォールの厳格な適用で業務の効率性が落ちるという不満が続出し、規制改編論議が始まった。
金融委は「会社の自律性が高まっただけに違反による刑事処罰・課徴金など事後的な責任を強化した」とし、「高い水準の内部統制基準を用意・運営した場合、違反が生じても監督者の責任は減免される」と変更の趣旨を明らかにした。
政府のチャイニーズウォール制度の見直しを受け、証券業界は活気を帯び始めている。
代表的には、NH投資証券は社内の部署別情報交流を遮断してきたチャイニーズウォール規制の緩和により、運用・営業・企画業務など分散していた機能を一つにまとめ、外部委託管理(OCIO)組織を大きく強化している。
組織再編を通じて、これまでチャイニーズウォール規制として散在していた機関顧客対象のサービス関連組織を機能別に再編した。機関資金運用諮問と支援機能を担当するOCIO事業部を新設し、OCIO営業および企画を担当していた機関営業本部など関連組織を傘下に編制した。
ISA市場、証券会社にマネームーブ
文在寅政権は庶民の財産形成と金融支援の強化のため、個人総合資産管理口座(ISA)に対する制度改善も推進してきた。
2023年からISAで国内株式や株式型ファンドに投資して発生した所得は非課税になるとの内容を盛り込んだ税法改正案を発表すると、証券会社には仲介型ISA加入関連の問い合わせが殺到した。
ISAの種類は、◇信託型ISA◇一任型ISA◇投資仲介型ISAに分けられるが、このうち証券会社の投資仲介型ISAの加入者が大幅に上昇し、銀行を追い越した。今年7月末現在、全体ISA口座のうち仲介型口座の割合は54%(121万9000個)になった。
今年8月末、証券会社のISA加入者数は152万1224人に達した。銀行の加入者数98万8118人の1.5倍にも達する。
今年初めまでも証券会社の加入者数はISA市場で10%に止まっていたが、仲介型ISAの税特典が注目され、証券会社の加入者数が初めて60%台を超えた。
仲介型ISAの場合、満期引き出しの際、口座から発生した損益を精算して金融所得200万ウォンまで非課税となり、超過分は分離課税を通じて9.9%の税率が適用される。
特に2023年から国内株式、非上場債券、国内株式型ファンドなどの利益が5000万ウォンを超過すれば、地方所得税を含めて22%の譲渡所得税が発生することになる。しかし、仲介型ISA加入者は金融投資所得に対して全額非課税の恩恵を受けることができる。
さらに、MZ世代(ミレニアル+Z世代)らが仲介型ISAの成長の勢いを牽引したという分析も出ている。今年7月末に仲介型ISAで20・30世代が占める割合は45%だ。
預金、積金、ファンド式など多様な金融商品を一口座に投資できることから「万能通帳」と呼ばれるだけに、直接投資を好むMZ世代の選択を受け、ISA加入者数の増加に影響を及ぼしたものと分析される。
ISAの加入者数が急増すると、証券会社も投資家を獲得するための競争に乗り出している。
今年2月にサムスン証券、NH投資証券が仲介型ISAを韓国で初めて発売した。大手証券会社はいち早く市場の先取りに乗り出し、今年8月からはユアンタ証券、シンヨン証券、ハンファ投資証券が加わり、競争はさらに激しくなった。7月基準で仲介型ISAを扱う証券会社は8社から9月には11社に増加した。
ある証券会社の関係者は「非課税と節税特典商品が見当たらない最近、年間利子所得に対して最大200万ウォンまでの非課税恩恵を受けることができる仲介型ISAは、まとまったお金による資産管理や財テクに有用だ」とし、「20・30世代が仲介型ISA商品に関心を示しているが、既存世代より運用資金が少ない部分を考慮し、資産管理分野で長期顧客として管理していくものとみられる」と述べた。
イ・ジウン記者