韓国「技術金融」に不良債権化のリスク

毎年50兆ウォンずつ拡大している銀行圏の技術金融市場が、不良債権化のリスクに直面している。融資需要の急増と比べ、テクノロジーアセスメントを担う人材が力不足なためだ。

当局主導、中小企業への支援策

技術金融は建物・土地など不動産担保が不足して信用度の低い中小企業に対し、保有する技術力を担保に資金を貸す商品だ。一般企業の信用ローンより金利が低く、融資限度は大きい。企業への実質的な金融支援と言える。

銀行は技術金融が、苦労と比べて利潤が低く、リスクだけが高い市場だと評価しながらも、金融当局の強い要望により規模を拡大するしかないと吐露する。

銀行連合会によると、昨年3月末基準の技術金融ローンの累積残高は329兆8104億ウォンを記録した。2014年に市場が形成されて以来、2015年末の60兆6000億ウォンから2021年316兆3615億ウォンまで急激に成長した。

銀行別でみると、中小企業が対象の国策銀行であるIBK企業銀行の残高が98兆9104億ウォンと最も多く、△KB国民銀行46兆8284億ウォン△新韓銀行45兆9811億ウォン△ウリ銀行44兆4563億ウォン△ハナ銀行39兆24億ウォンの順となっている。

しかし、市場の急速な成長によって、技術金融市場に不良債権化の危険が近づいている。

評価人材「力不足」

銀行は技術金融の融資審査時、コデータ(旧韓国企業データ)、ナイス評価情報、イークレディブルなど企業信用評価会社(TCB)の5つの機関が付けたTCB報告書を義務的に適用しなければならない。

しかし、技術金融の拡大に伴って急増した技術評価の需要を5社で消化するには、専門人材と力量などの面において無理があるという指摘が出ている。

実際、TCBの代表格であるコデータの関連業務人員は100人余りだとされる。

専門家たちは、技術評価がきちんと行われるためには、面談と実地調査などを通じて1人当たり1カ月に最大20~30件の評価を行うのが理想的だと言うが、専門人材の不足によって1人当たり1カ月に数百件の評価を行うケースも見られる。

TCBは人材の補充と電算システムの高度化を進めているが、評価者の定性的能力が重要な技術金融の特性を考慮すると、評価の量と質を同時に引き上げるには、相当の時間がかかると思われる。

市中銀行のある関係者は「TCB報告書に問題が見つかっても、その責任はTCBではなく、銀行が全部抱えなければならない。急増する需要によって、品質が検証されていないTCBレポートが増えれば、銀行の健全性問題につながる恐れがある」と述べた。

続けて「新型コロナの長期化で内外の経済状況が悪化し、技術金融に対する企業評価能力が一層求められている」とし、「技術金融の不良債権化を防ぎ、安定した未来に転換させるために銀行自体の評価システムを高度化して対応している」と付け加えた。

「成果主義」が助長

こうした懸念が増す中でも、銀行が取り扱いを増やしているのは、当局の評価基準が成果主義であるためだ。

政府は、不動産担保中心で行われた信用評価を、未来成長性が中心となるよう促し、革新創業企業の資金繰りを支援するために技術金融市場の活性化を継続して主導してきた。

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金融当局は1年に2回、銀行圏の技術金融実績評価(以下TECH評価)を実施し、銀行連合会技術金融総合状況板に毎月、銀行別の技術金融融資の取扱実績(残高、件数)を公示する。

TECH評価の結果によって、オン・レンディング(中小・中堅企業支援政策金融)限度を傾斜配分し、信用・技術保証基金の拠出削減インセンティブも付与する。

実績が毎年増えることで、銀行が政府の政策に積極的に呼応しているように見えるが、本音は「やむを得ず」やっているにすぎない。

市中銀行の関係者は「審査インフラが厳しい技術金融は、貸出先の企業が成長してこそ元手を取れる」とし、「マージンが非常に制限的な市場だが、銀行別に実績をランキングされるので、背中を押されて拡大に取り組み始めた部分がある」と述べた。

アン・ソユン記者