韓国で銀行の年金貯蓄信託が「マイナス収益の沼」
韓国の銀行が販売した、9兆ウォン規模の年金貯蓄信託がマイナス収益の沼にはまっている。銀行は、もはや新規取り扱いのない商品だということで、運用姿勢は投げやりだ。
9兆ウォン規模、投げやりな運用
韓国銀行連合会によると、銀行圏の年金貯蓄信託受託高(評価金額)は、今年第1四半期末で9兆5559億5600万ウォンだ。新韓銀行が2兆5975億ウォンで運用規模が最も大きく、KB国民銀行(2兆2938億ウォン)、NH農協銀行(1兆6867億ウォン)、ハナ銀行(1兆235億ウォン)の順で続く。
年金貯蓄信託は顧客が銀行に資産を預けて運用を委託した後、加入から5年が経過するか、満55歳を超えると、年金の形で受け取れる商品として2001年から販売された。
10%を超える税制特典もあり、発売後の数年間は人気を集めたが、低い収益率の問題がなかなか改善されず、2018年に政府が販売を中止させた。
年金貯蓄信託販売窓口が閉鎖されてから3年余り経った現在、依然として9兆ウォンの受託高が残っているが、収益率はさらに低下した。
年金貯蓄信託受託高の88%(8兆4290億ウォン)を運用している5つの主要市中銀行の、昨年3月末までの1年間の平均収益率は-0.88%を記録した。年2~3%の預・積金にも劣る数値だ。
一番低いのはNH農協銀行で-1.41%となっており、新韓銀行(-0.91%)とハナ銀行(-0.88%)、ウリィ銀行(-0.7%)、KB国民銀行(-0.52%)のすべてがマイナスだ。販売停止直後の2019年の年平均収益率2.34%からさらに急落した。
保険会社はプラス
銀行は元金保障商品の特性上、保守的に運用しなければならない限界のためだと反論する。年金貯蓄信託の場合、80%以上が国公債や投資等級以上の優良債券などで運用されているが、債券型商品は安全性こそ高いが、大きな収益を出すのは難しいということだ。
しかし、銀行と同様に元金が保障され、預金者保護もなされている保険会社の年金貯蓄保険は、5大銀行の受託高より多額を運用しながらも、比較的に柔軟な収益戦略を展開したおかげでプラス収益を守っている。昨年3月末基準の年金貯蓄保険の平均収益率は1.69%を上回る。
市中銀行の関係者は「最近市場金利の急騰で債券価格が下がっている。年金貯蓄信託収益率は今年もマイナスを免れない可能性が高い」としながらも、「すでに商品構造の構築が終わった状態なので、収益率向上のためのポートフォリオ調整など資産交換作業は容易ではない」と説明した。
これに対し年金貯蓄市場では、既存の信託加入者が保険、ファンド商品に素早く移る様相が展開されている。年金貯蓄口座振替制度を活用すれば、年金貯蓄信託口座にあるお金を保険会社、証券会社の年金貯蓄商品に移転することができる。
金融監督院が公開した「2021年度年金貯蓄現況及び示唆点」によると、昨年の年金貯蓄新規契約件数は174万9000件で、前年より194.4%増加した。このうちファンドが163万4000件、保険が11万6000件だった。
アン・ソユン記者