韓国「賃金ピーク制」違憲判決に悩む国策銀行

韓国の最高裁判所は先月26日、合理的な理由なく年齢だけを基準とする「賃金ピーク制」を無効とする判断を示した。賃金ピーク制は雇用または定年延長を保障する代わりに一定の年齢以降の賃金を引き下げる制度で、公共機関と大企業で広く取り入れられている。

金融労組は廃止論議に突入

最高裁判所は、この制度が年齢で労働者を差別してはならないと規定した高齢者雇用法に違反するものと認めた。定年を遅らせるか、業務を減らすなどの合理的な措置なしに賃金を削るのは違法であるとした。

これに、韓国の国策銀行は神経を尖らせている。今回の判決が賃金ピーク制そのものを無効にしたわけではないが、これをきっかけに訴訟が相次ぐ恐れがあるためだ。

KDB産業銀行、IBK企業銀行、韓国輸出入銀行の3大国策銀行の今年の賃金ピーク制適用職員は1501人と推定される。従業員全体の12.5%に相当する数だ。2016年に312人、2019年には636人と増加傾向にあり、全職員のうち50代以上が約40%に達する点を踏まえると、増加スピードはさらに速まる見込みだ。

国策銀行で賃金ピーク制が活性化したのは、政府方針により、公企業では希望退職制度の実施が困難だからだ。

「希望退職は困難」

企画財政政府のガイドラインによると、国策銀行の希望退職金は月平均賃金の45%を基準給与とし、ここに退職までの残余期間の半分を掛けて金額を算定する。希望退職に応じると、本来の退職時までに受け取れるはずだった賃金の4分の1しか支給されないということだ。一方、賃金ピーク制が適用されると賃金は減るが、残りの期間の半分以上の賃金を受け取ることができる。

国策銀行の職員には、賃金ピーク制より受け取れるお金が少ない希望退職を選択する理由がない。そのため国策銀行は、2015年以降一度も希望退職を実施していない。

市中銀行は通常、21~36ヵ月分の平均賃金に子供の学費、転職支援金など上乗せした数千万ウォンを支給し、年間数百人を早期退職に誘導するが、賃金ピーク制適用者は数十人にすぎない。昨年末基準で、KB国民・新韓・ハナ・ウリィ銀行で賃金ピーク制を適用されている職員の割合は平均1.1%だ。

国策銀行は政府に希望退職条件の改善を絶えず求めているが、実現は容易ではない。

国策銀行のある関係者は「希望退職金ガイドラインの緩和に対し政府は、他の公共機関との公平性問題を挙げて強い反対の立場を守っている」とし、「人事滞積が深刻な状況だが、国策銀行では『お金をたくさん払って退職してもらおう』という主張が、国民情緒の面で受け入れられにくいようだ」と述べた。

また「賃金ピーク制だけが人事の構造的問題の解決策だったが、違憲判決で限界点が明らかになった」とし、「金融労組はすでに、賃金ピーク制廃止もしくは制度変更を議論するための法的な検討に突入したという。改善案が急がれる」と指摘した。

アン・ソユン記者