韓国金融業界に新たなリスク…第2金融圏に火種

2021年8月11日

韓国の貯蓄銀行で、法人に対する融資が急増している。家計貸付を引き締めたことで表れた「風船効果」だ。

体力の弱い中小企業や借入の多い債務者が貸出先の多くを占める貯蓄銀行の特性上、不良債権化のリスクが高まるとの指摘が出ている。

貯蓄銀行の法人融資急増…家計貸付の引締めで「風船効果」

金融当局は9日までに、貯蓄銀行に対し、家計貸付の点検を週単位で実施するよう求めた。今年上半期の貯蓄銀行の家計貸付の増加率は年8-9%で、金融当局の目標値(5-6%)を上回った。目標値の範囲内に抑えるため、貯蓄銀行は下半期の増加率を3-4%まで大幅に縮小しなければならない。

金融当局は先月、第2金融圏に対する家計貸付の追加規制についても言及した。増加の勢いが抑制されなければ、都市銀行並みに規制強化するという意味だ。

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貯蓄銀行は家計貸付規制による利子収益の減少を埋め合わせるため、法人融資に目を向けている。金融当局のモニタリングと規制は家計貸付に限定され、法人への融資を増やすことには制約がない。

金融当局が誘導

金融当局も、貯蓄銀行を法人融資に誘導しているものと見られる。先月には相互貯蓄銀行法施行令を改正し、個人事業者や企業への融資限度を20%ずつ増やした。資産が1兆ウォン以上の貯蓄銀行は、個人事業者に対しては60億ウォン、企業に対しては120億ウォンまで融資できるようになった。

問題は、貯蓄銀行の法人に対する融資残高が相当な規模に達しているということだ。 韓国銀行(中央銀行)によると、今年5月の貯蓄銀行の法人融資残高は49兆7208億ウォンで、前年同期(41兆1552億ウォン)比20.8%増加した。現在は、50兆ウォンをゆうに超えたものと推定されている。

都市銀行より信用度の低い借主が融資対象となる貯蓄銀行の特性上、中小企業に融資が集中していることも懸念される現状だ。今年5月時点での中小企業に対する融資残高は、法人融資全体の95.2%(47兆3624億ウォン)を占めた。

専門家は、中小企業に対する融資で不良債権の発生を予告している。満期延長・返済猶予などの措置で不良債権化が先送りされているだけで、リスクは膨らんでいるとの指摘が出ている。特に、貯蓄銀行など第2金融圏は、都市銀行に比べ借入が過剰となっている債務者が多く、リスクが加重されかねない。

延世大学校経済学部のソン·テユン教授は「家計貸付だけでなく、法人融資も別途管理しなければならない」とし、「金融当局も中小企業融資について、信用度が低かったり、リスクがあったりする部分を把握してアプローチする必要がある」と述べた。

また、祥明大学経済学部のソ·ジヨン教授は「銀行が危険加重資産を算出する際も家計貸付よりは中小企業融資の加重値の方が高い」としながら、「最近、当局は家計貸付規制によって減る利益を補填するために法人融資の上限枠を増やしているとみられるが、危険だ」と指摘した。

パク・ジンヒョク記者