韓国の銀行で「青年インターンシップ」形骸化…正規入社、ごくわずか
銀行への就職を夢見る韓国の大学生Aさんは最近、実務経験を積むため、ある銀行のインターンシップ制度である「デジタルサポーターズ」に志願した。支店に配置され勤務を開始したAさんに任された仕事は、高齢者への銀行アプリケーションの使い方の案内がすべてだった。Aさんは、デジタルサポーターズの活動が銀行への就職につながるかどうか疑問に思っている。
「高齢者担当のバイトに過ぎない」
銀行圏の「青年インターンシップ制度」が形骸化している。
青年インターンシップ制度は2008年、李明博(イ・ミョンバク)政権当時の青年失業対策である「仕事の分け合い」事業を通じ、公共機関を中心に導入された。
2009年には都市銀行もこれと歩調を合わせ、インターンシップ採用計画を発表した。 このため、大学生たちの間ではインターンシップ就職ブームが起きた。しかし今は、インターンに任される仕事の質が大幅に低下したという指摘が出ている。
IBK企業銀行は先月20日、夏季体験型青年インターンシップ250人を採用した。受験者は4707人を数え、競争率は約19倍にもなった。
IBK企業銀行の青年インターンシップは高い競争率で有名だ。規模や体系の面で最も活性化されており、同じ国策銀行のKDB産業銀行や輸出入銀行と比べ、市中銀行に近い金融業務を学ぶことができるため、銀行圏の就活生から人気を集めている。
しかし、都市銀行が運営する青年インターンシップは規模が縮小し、履修内容も導入趣旨からかけ離れているとも言われる。
保守政権が去るや規模縮小
ハナ銀行は、今年の夏季大学生インターンシップ募集人員を2ケタに縮小し、募集分野も営業店および本部部署の業務支援をすべて除外し、デジタル部門に限定した。
ウリ銀行と新韓銀行は青年インターンシップを募集していない。その理由は銀行業務の特性上、大学生のインターンシップに任せられる仕事が制限されるから、というものだ。例外として、青年向けの対外活動事業である、大学生の広報大使だけを運営している。
KB国民銀行は、青年インターンシップの代わりに大学生を対象とした「デジタルサポーターズ」を随時採用している。サポーターズに選ばれた大学生たちは、営業店での勤務を経験できるメリットがる。しかし主な業務は、高齢者向けの専門相談員だ。
その結果、インターネット上の金融業界の就活生コミュニティなどでは、「デジタルサポーターズは実務経験を積むものではなく、単純な仕事を繰り返すアルバイトに過ぎない」という声も出ている。
KB国民銀行は今年下半期から、デジタルサポーターズ勤務期間を従来の2カ月から6カ月に延ばして時給を引き上げるなど、制度運営のコンセプトを対外活動の機会から大学生のためのアルバイトに方向性を変えた。
青年インターンシップは、一定の給与をもらって実務を身につけ、正社員としての入社につなげるために始まった。しかし、インターンを経て正社員として入社した職員は数えるほどしかいない。銀行がインターンシップ制度参加者に提供するメリットが減ったためだ。
IBK企業銀行は、優秀青年インターンシップ修了者に限り、公開採用筆記試験で10%の加算点を与える。ハナ銀行やウリ銀行、新韓銀行も、青年インターンシップや大学生広報大使のうち、優秀活動者に限って書類選考免除権を与えている。
若者に「無駄な希望」
優秀活動者に選ばれなかった人は、入社特典を得られないどころか、上述したような活動履歴では、面接の際に「金融実務を経験した」とアピールするにも限界がある。
ある銀行圏関係者は「銀行のインターンシップ制度は就活生にとって、全般的な銀行業務と商品理解度を高める教育次元のものだ。お金を扱うので詳細業務を教えるのに限界があり、他の業界のような正社員転換を前提としたインターンシップ制度とは違いがある」と語った。
「インターンシップ制度は無駄な希望を持たせてしまう」
一部では、銀行はインターンシップ制度を推進した保守政権が進歩政権に交代したことを受けて、ひそかに採用規模を減らしているとの見方も出ている。青年インターンシップ制度に対する政権からの圧迫がなくなるや、担当させる業務の水準を落とし、「言い訳」用におとしめたというものだ。
共に民主党(与党)の金斗官(キム·ドゥグァン)議員がKDB産業銀行、輸出入銀行、IBK企業銀行から提出を受けた資料によると、今年、体験型青年インターンシップの出身者で正社員になれたのは10人に1人(約9%)だ。
採用連携型の青年インターンシップ制度を運営している国策銀行がこの程度なら、さらに限られた業務のみ履修する都市銀行の青年インターンシップの就職は、さらに「狭き門」だろう。
金議員は「銀行圏の青年インターンシップ制度は事実上、若者たちに無駄な希望を持たせてしまう。公正な手続きを通じて選抜され、最低賃金に近い賃金で会社のために奉仕した人材たちにもっと大きなインセンティブを付与する案を用意しなければならない」と述べた。
アン・ソユン記者