韓国銀行圏、外貨確保に新商品ラッシュ
韓国の市中銀行が外貨資金の調達を急いでいる。ドル・ウォン為替レートの高騰が続く中、米国の中央銀行が年末まで金利引き上げスタンスを継続すると見込まれていることもあり、外貨をあらかじめ確保しておいた方が有利との判断からだ。
ドル・ウォン相場の高騰続く
市中銀行は外貨預金の誘致プロモーションを先を争って推進している。為替レートの急騰により金融消費者の関心がドル預金商品に向かうと、これを外貨資金調達の機会と捉え、熾烈な競争を繰り広げているのだ。
NH農協銀行は最近、法人専用の引き出し自由型外貨預金「NHプラス外貨MMDA」を発売した。同商品は外貨を1日だけ預けても外貨定期預金水準の高金利を提供する。100万ドルの預金時に適用される金利は年1.91%だ
KB国民銀行の場合、来月末までに外貨定期預金特版を実施する。法人顧客が「KB輸出入企業優遇外貨通帳」を初めて開設した後、外貨定期預金に加入すれば90%の為替レート優遇特典を提供する。個人顧客の対象にも外貨預金加入時、口座当たり最大10万ドルまで、毎営業日の元金と手取り利息に対して福利効果をもたらすイベントを進めている。
SC第一銀行は、今月11日から26日まで外貨定期預金に100ドル以上加入する新規の取引顧客に対して、最高年3.5%の特別金利を適用するイベントを行い、合計2500万ドルを募集した。
ただし、外貨預金で確保した資金は、為替相場の上昇傾向が伸び悩むと、「為替差益」実現需要で残高が急減することがある。これに対し、銀行は補完手段として外貨債券の発行にも積極的な様子だ。
今年初め、ウリィ銀行の5億ドル規模の外貨ESG債券発行を皮切りに、ハナ銀行が去る3月に6億ドル規模のESG債券を、新韓銀行は昨年4月に国内で初めて5億ドル規模の気候債券を発行した。
さらに、KB国民銀行が昨年6月には、5億ユーロ規模のカバードボンド(二重返済請求権の債権)を、NH農協銀行では6億ドル規模のグローバルソーシャルボンド(特殊目的債権)を発行した。
政府も支援
金融監督院は、国内銀行が容易に外貨を調達できるよう支援に乗り出した。
国内銀行が、保険会社など国内金融会社が保有している外貨証券を活用できるようにする非措置意見書を発行した。
非措置意見書とは、金融当局が経済主体の特定の行為について制裁などの措置をとるかどうかに関する意思を事前に確認する文書を言う。規制の不確実性を減らすためのものである。
今回の措置によって国内銀行は、国内保険会社から外貨証券を借りた後、海外市場でこれを担保に外貨資金を調達(買い戻し条件付債券の売り渡し)することができるようになる。
国内主要金融会社が保有している米国国債と国際機関債券などの規模は6月末基準で約312億ドルだ
銀行圏のある関係者は「新型コロナをきっかけに、銀行の外貨流動性が悪化した状況」とし「インフレを抑える米国中央銀行の通貨政策の緊縮が長くなると予想されるにつれて、調達費用がさらに上がる前に外貨の残高を確保するために忙しく動いている」と述べた。
一方、4大銀行の今年第2四半期の平均外貨流動性カバレッジ比率(LCR)は118.98%で、昨年第4四半期(111.15%)より7.83ポイント上昇したが、新型コロナが拡散する直前の2019年第4四半期(120.74)と比較して1.76%ポイント下がった。銀行の外貨LCRが下がったということは、その分、外国為替リスク発生に対する準備水準が以前より悪化したということだ。
アン・ソユン記者