韓国の銀行、DSR規制緩和を歓迎…「融資バランス」に苦心も

今年5月の就任を控えた尹錫悦(ユン·ソクヨル)韓国次期大統領が、家計向け融資規制の緩和の意向を示している中、各銀行では全体的な融資規模について、電卓を叩いている。

次期大統領の選挙公約

銀行にとって、家計向け融資の規制が緩められるのは嬉しいニュースだ。しかし、バーゼルⅢの導入に合わせて維持してきた家計向け融資と企業融資の取扱の割合のバランスが崩れるのではないかという懸念が共存している。

政界や金融業界などによると、尹次期大統領は家計向け融資の規制緩和に関する公約を現実化するため、新政権発足と同時に住宅担保認定比率(LTV)や総負債元利金返済比率(DSR)の規制を見直すだろうという見方が出ている。

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尹次期大統領の公約集に盛り込まれた金融関連の政策を見ると、青年・新婚夫婦のマイホーム購入支援のため、生涯最初の住宅購入世帯のLTV上限を80%に引き上げ、それ以外の場合、LTV上限を地域と関係なく70%に一本化するのが主な内容だ。多住宅保有者に対しては、保有住宅数によってLTV上限を40%、30%などに差別化する方針だ。

また、大統領職引継委員会はLTV緩和公約に合わせて、現在2億ウォン、今年7月には1億ウォンに縮小される予定だったDSR規制の基準限度を5億ウォン水準に調整する案を検討しているという。年間所得の40%以内での融資枠は維持するものの、限度引き上げへと適用対象を拡大し、実需要者が被るネガティブな影響を最小限に食い止めるという。

各銀行は家計向け融資に関する規制緩和を喜んでいる。ただ、全体与信ポートフォリオの運営がリスクになる部分はないか、シミュレーションを回しながら点検に乗り出す雰囲気だ。大幅に引き上げられた最大限度まで家計向け融資の規模が急速に増え始めれば、企業融資との取扱比重の調節が難しくなるためだ。

2020年に銀行資本の健全性に関する国際協約「バーゼルⅢ」を導入した銀行は、新規融資(韓国ウォンの融資金の純増額)のうち、企業融資の割合を過半数で維持しなければならない。

バーゼルⅢ導入条件

バーゼルⅢは、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)が勧告した「銀行の危険加重資産算出方式」の見直し案で、企業融資の信用リスク算出基準を緩和する内容を盛り込んでいる。

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当初、今年から施行される予定だったが、金融当局は新型コロナウイルス事態を克服するため、企業資金の支援規模を増やせるバーゼルⅢを早期導入する代わりに、銀行による企業融資の割合拡大を条件に掲げた。

金融当局が勧告した割合は国民・新韓・ウリィ銀行が57%、農協銀行が51%、1年遅れてバーゼルⅢを導入したハナ銀行は65%だ。

これを受け、各銀行は昨年から企業向け金融の強化を戦略目標に据え、大手企業や中小企業、ソーホー(SOHO)など、全ての部門における企業融資資産の拡大に力を注いだ。その結果、現在、50%台後半から60%台前半水準まで引き上げた。

ある都市銀行の関係者は「バーゼルⅢの要件のためでもDSR規制が緩和されることは容易ではないという業界の見通しと異なり、大統領職引継委員会ですでに動きを見せている」としながら、「これまで企業融資の力量の拡大に努めてきたため、直ちに取扱の比率が大きく揺れることはないだろうが、家計向け融資規制が緩和の基調に乗っただけに、今後の与信ポートフォリオ運営戦略に対する検討と一定部分調整が行われる可能性がある」と述べた。

アン・ソユン記者