韓国ネット銀行、ストックオプション乱発に「諸刃の剣」懸念
韓国のネット銀行が、ストックオプションを頻繁に発行している。役職員の勤労意欲を高め、人材確保での競争力を高めるためのカードだが、不公正配付の議論とオーバーハングのリスクを生じさせる「諸刃の剣」になりかねないという指摘が出ている。
人材確保のカード
カカオバンクは今月29日に予定されている株主総会で、行員866人に対する計46万7062株のストックオプション付与案件を上程する予定だ。行使価格は4万6693ウォンで、行使期間は2024年3月10日から2029年3月10日までだ。付与対象は当該案件の取締役会の決議日である今月10日から2年以上在職した職員だ。
トスバンクも先月28日、入社1周年を迎えた社内役職員17名にストックオプション計34万株を付与した。行使価格は額面価格基準、1株当たり5000ウォンで、ストックオプションを受けた役職員は付与日から2年後の2024年2月28日から5年間、これを行使できる。
ストックオプションは企業の設立、経営、技術革新などに貢献した役職員にあらかじめ定めた価格で当該企業の株式が買えるように付与した権利だ。株式価格が上がれば、役員や従業員が得られる差益が増えることになる。
このため、企業ではボーナス、高年俸のような現金支出なしに優秀な人材を誘致し、役職員の勤労意欲を高める目的のインセンティブとしてストックオプションを活用している。
実際、ネット銀行が与えたストックオプションは、昨年役員たちの総報酬を銀行圏で最大水準に引き上げるのに一役買った。
昨年、カカオバンクの役員の平均報酬は1億5300万ウォンで、前年(7900万ウォン)比2倍近く増加し、業界1位を記録した。昨年3月から行使が可能になった役職員のストックオプションの売却益が反映された結果だというのがカカオバンク側の説明だ。
ただ、ネット銀行のストックオプションについては、業界内外では、さまざまなリスクを懸念する見方も多い。
本末転倒も
昨年7月、ストックオプションを進めたケイバンクが不公正配付の論争に巻き込まれたことがある。銀行圏では初めて全行員に付与したが、ストックオプション全体の半分以上が少数の役員に集まった。その結果、一部の職員は成果を考慮しない分配で剥奪感を感じたと不満を提起した。
業績を引き上げるために用意した「アメ」が、むしろ職員たちの士気を低下させ、人材流出のきっかけを作ったという指摘だ。
それから上場直後、役職員がストックオプションを大量行使して新株を売却してしまうことも負担要素だ。いわゆる「食い逃げ」と呼ばれるこの行為は、昨年11月に上場したカカオペイが代表的な事例だ。
リュ・ヨンジン元代表を含む当時のカカオペイ役員らは、カカオペイ上場直後、470億(1株当たり処分単価20万4017ウォン)に達するストックオプション行使、新株を売却して巨額の差益を手にし、株式価値を下げるモラルハザードで激しい批判を受けたことがあった。
これに対して金融圏の一部では、ネット銀行にも都市銀行のように過度なストックオプションの付与を制限する管理策を設けるべきだという声が出ている。
都市銀行を含む多くの韓国の銀行は2008年の世界的な金融危機以降、ストックオプション制度を廃止した。金融圏の最高経営者(CEO)らに向けた過度な成果給の議論や金融当局の長期成果報酬体系の導入勧告によるものだ。
その代わり、長期成果と連動した「ストックグラント」制度を運営している。
ストックグラントとは役職員に株式を無償で支給するインセンティブで、長期経営成果が不十分であれば株式が支給されない。
「モラルハザードの懸念」
ある金融圏の関係者は「2008年のグローバル金融危機の原因の一つは大手金融会社の経営陣に対する過度なストックオプションの付与が挙げられる」としながら、「資産規模が少ない銀行であっても、過度なストックオプションによる内部葛藤と経営陣のモラルハザード懸念は看過できない」と指摘した。
続けて「伝統的な金融業務を土台にしながら、役職員の勤労意欲向上と優秀な人材確保など面ではIT企業の生態を固守するのは不合理な側面がある」と付け加えた。
アン・ソユン記者