韓国・産業銀行、小口金融「後回し」に懸念
KDB産業銀行が小口金融事業をめぐって混乱に見舞われている。現政権下において、政策機関として機能を強調するあまり、預金が押し寄せる状況にもかかわらず今後の安定的な資金調達策の構築が後回しにされている。
増大する政策需要、資金繰り必須
産業銀行によると、先月末時点での預金規模は約51兆ウォンだった。金融監督院の金融統計情報システムに公示された5年前の数値(27兆7000万ウォン)と比べて2倍近く増加した。
今年に入ってからは9兆ウォン以上が増加したが、同期間、個人顧客数が同行の数倍に達する5大市中銀行の預金が平均14兆ウォンずつ増えたのと比べ、驚くほどの実績だという評価だ。
産業銀行は近年、企業の構造調整や革新産業投資などリスク負担が大きい政策金融機能を遂行する過程で収益性が悪化し、小口金融の強化で穴埋めしようと苦労してきた。
そして、今年の初めから続く基準金利引き上げの歩みが預金増大の起爆剤となった。
市中資金が預・積金に殺到する「逆マネームーブ」現象が本格化し、より高い金利の商品を求めて資金を随時移動させる「金利遊牧民」の視線が産業銀行に向かったのだ。営業店の少ない産業銀行は他の銀行より経費率が低く抑えられるため、預・積金の基本利率が高めに設定されているためだ。
ただし、業界では産業銀行が小口金融の強化していくためには、今後の策が足りていないように見えるとの指摘が出ている。現状では特段のマーケティングがなくても預・積金に人気が集まっているが、新たに流入した顧客の忠誠度を高めるような誘引策が足りないということだ。
一例として、産業銀行が去る2019年、民間と共同で発売した「KDB x T high5積金」は、シンプルな条件を満たすだけで高金利効果を得ることができ、顧客の好反応を引き出したヒット作だった。
しかし、この商品の最高金利は年5%で、現在も2019年の発売当時のままだ。他の銀行が顧客誘致のために、人気の預・積金商品の利率を基準金利の引き上げ幅に合わせて上方調整しているのと対照的だ。
「政権公約に没頭」
市中銀行は各種イベントと優待金利を提供する方式でオープンバンキング登録へ積極的に誘導し、顧客の維持及び確保を競っている。一方、産業銀行はオープンバンキング特化商品として「KDBオープンバンキング定期預金」のみ取り扱っているが、これさえも昨年3月31日をもって販売が終了した。
ある銀行圏の関係者は「産業銀行は近年、小口金融部門の能力強化に努めてきたが、最近はこれを後回しにする様子だ」とし、「昨年6月にカン・ソクフン頭取が就任してから、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の公約であり、新政権の国政課題である本店の釜山移転問題だけに没頭している」と指摘した。
続けて「本店移転の名分として、地域均衡開発、造船・海洋産業の育成など国策銀行として政策的な機能を前面に立てているので、個人顧客対象の小口金融を育てる努力がおろそかにされている」と付け加えた。
また「国策銀行のアイデンティティの確立も重要だが、増大する政策金融需要に対応するためには民間資金まで吸い寄せる必要性が大きくなっているだけに、次にいつ来るか分からない預金拡大の機会を逃さず、安定的な資金調達として維持する方案を用意することも必要に見える」と述べた。
アン・ソユン記者