「信用貸付の上限は年収以下に」韓国当局の”奇襲”に銀行も顧客もパニック
韓国の金融当局が連日、高止まり状態が続いている家計債務の増加傾向を抑えるため、都市銀行に対し、さらに強力な信用貸付抑制策を指示した。これを受け、唐突で劇的な措置に対し、資金調達計画を立てていた金融消費者はもとより、各銀行も戸惑っている。
KB国民、新韓、ハナ、ウリなど国内の主要銀行は、信用貸付の限度額を借主の年間所得(年収)範囲内で運営する案を検討している。
金融監督院は今月13日、都市銀行の与信担当役員を集めた会議で、こうした内容を要請した。先月から段階的に実施に入った個別DSR(総債務元利金償還比率)規制が適用されない借主を相手に、銀行が過度な信用貸付を行っていると判断したからだ。
銀行は現在、信用貸付の限度額を年間所得の1.5~2倍の水準に設定している。
事実上の強制
金融監督院は、信用貸付の限度引き下げは「口頭勧告」のレベルだと強調したが、銀行は事実上の強制と変わらないとの立場だ。
都市銀行のある関係者は「金融当局が家計債務のリスク管理のため信用貸付をさらに減らすよう注文した」とし、「協力要請ではあっても、金融当局が先立って融資総量の推移をモニタリングすると脅しをかけた状況であるため、従うしかない立場だ。適切な適用時期を内部で調整中だ」と述べた。
信用貸付のハードルがさらに厳しくなるという憂慮で、市場はすでに混乱している。 特に今、利用中である信用貸付の再約定・延長時期があまり残っていない人や、住宅売買を控えて不足する資金のために信用貸付を受けようとしていた人々の不安が高まっている。
信用貸付限度額の縮小案がいつから反映されるか分からない点がが、駆け込み需要をさらにあおっているとの懸念も出ている。
現在、各種のオンラインコミュニティでは、先週末と光復節(8月15日)の振替休日(8月16日)の間、関連ニュースが早くも共有され、既存の融資延長に対する遡及適用の可否や、住宅担保融資の実行または公募株請約前に、あらかじめ信用貸付を受けておいた方が有利かどうか判断するための意見を問う書き込みが殺到している。
また、銀行の支店にも関連の問い合わせが相次いでいるが、具体的に決まったことがないので、行員は即時対応が不可能な状況だ。
実需にも悪影響
一部では、今回の金融当局の判断を巡り、投資目的以外の医療費や生活費など、緊急目的への融資需要まで悪影響を及ぼす強引すぎるやり方だという指摘も出ている。
また、別の都市銀行の関係者は、「今年初めから続く信用貸付枠縮小のニュースを受け、急増する融資を防ぐための金融当局の趣旨とは裏腹に、市場では今すぐ必要がなくても、借入を繰り上げておこうという仮需要で『パニック融資』とも言える副作用が起きている」と語った。
続いて「ひとまず融資を阻止しようというやり方は、急激に厳しくなった状況で融資を受けるしかない顧客の事情をさらに悪化させる可能性がある」とし、「金利上昇が予見された状況で銀行もリスク管理に努めているだけに、一律的な規律よりは経済論理に任せて市場の流れに合わせた漸進的な措置を取ることが家計債務安定にとってより効果的だと思う」と付け加えた。
これに関し、金融監督院の関係者は「最近、DSR規制の適用を受けない若者を中心に、いわゆる『ヨンクル(※1)』と『ピットゥ(※2)』で仮想資産、株式などへの投資目的の融資が急速に増え、こうした規制差益を活用した融資を管理する必要性が出てきた」とし、「今回の協力要請は今後、株価下落や金利上昇に伴い発生する延滞などのリスクを最小限に抑えるための措置だ」と述べた。
【注※1】「ヨンホン(魂)」と「クロモウダ(かき集める)」を合わせた造語で、あらゆる資金を動員して住宅を購入することを言う。
【注※2】「ピッ(借金)」と「トゥジャ(投資)」を合わせた造語で、借金して株式などへの投資を行うことを言う。
アン・ソユン記者