韓国銀行圏、巨額横領事件で冷や汗

韓国の都市銀行は、最近発生した「オステムインプラント職員横領」事件に冷や汗を流している。ただでさえ新型コロナウイルス流行の長期化で、不健全性への警告などが大きくなった企業向け融資に、穴が開くのではないかと懸念されるからだ。

1880億ウォン横領、株投資に失敗

金融監督院によると、オステムインプラントは銀行から、計3026億ウォンを借りている。

同社に対する融資残高を銀行別に見ると、ウリィ銀行が1073億ウォン(昨年第3四半期基準)で最も多かった。続いて◇産業銀行=804億ウォン◇輸出入銀行=250億ウォン◇新韓銀行=212億ウォン◇IBK企業銀行=193億ウォン◇シティ銀行=80億ウォン◇KB国民銀行=46億ウォン◇NH農協銀行=1億ウォンなどだ。このうち、残存満期が1年以内の短期借入金は1086億ウォン、長期借入金は1940億ウォンと集計された。

オステムインプラントは韓国トップのインプラントメーカーであり、コスダック(KOSDAQ)の上場企業で、最近、職員の巨額横領を巡る醜聞が持ち上がった。昨年10月、財務担当職員のA容疑者が会社資金から1880億ウォンを横領し、半導体装備会社の東進セミケムの株式を1430億ウォンほど買収し、投資に失敗した。

各銀行はオステムインプラントに対する信用格付けの再評価を実施し、返済対策を要求する方針だ。延滞の発生を恐れ、直ちに融資の回収を決定する段階ではないが、特別事態が発生しただけに、直ちにモニタリングに乗り出した。

オステムインプラント株が組み込まれたファンドに対する後続措置にも取り組んでいる。各都市銀行が販売した公募ファンドのうち、20件あまりがオステムインプラント株を組み込んでいると知られている。

ハナ銀行は横領事件の発覚当日、オステムインプラントの組み込みファンドの販売を中止した。IRを通じて、当該ファンドには「大規模な横領事件を受けてKOSDOQ市場で取引が中止されたオステムインプラントの株式銘柄を組み込んでいる」と明らかにし、「今後、オステムインプラントの株価の取引再開の際に、基準価格の下落する可能性が高い」という内容を案内した。

新韓銀行も職員らを対象に、オステムインプラント株を組み込んでいる自社販売ファンドのリストを開示した。顧客の問い合わせに対応するための措置であり、顧客にファンド追加加入中止の案内もする方針だ。国民銀行も同様に、オステムインプラント株の組み込みファンドの販売中止案を検討しているという。

銀行圏、融資管理能力に疑問

今回の事態を巡り、一部では銀行の融資管理能力に疑問の声が出ている。

時価総額2兆ウォンのKOSDOQ上場企業で、社員が数カ月にわたり2000億ウォン近くの資金を横領したにもかかわらず、事前に把握できなかったのは財務管理・社内統制システムが十分に機能しなかったためと指摘されている。

都市銀行のある関係者は「オステムインプラントは売上と収益が堅実で担保物件も多く、今回の横領事態で心配される被害金額は微々たる水準だ」としながら、「すぐに資金を回収したり、信用格付けを下げたりする措置は取らないと思う」と説明した。

金融当局も、まずは見守るという立場だ。

鄭恩甫(チョン・ウンボ)金融監督院長はオステムインプラント横領事件について、「司法当局で調査が進められている。調査過程でさまざまな事実関係と法理的な側面が分析される」としながら、「これに対して当局も綿密にモニタリングしていく」と述べた。

アン・ソユン記者