韓国政府、保険会社の株式保有リスクを下方修正
韓国政府は、来年導入される新支給余力制度(K-ICS、キックス)で、保険会社が投資した「長期保有株式」の株価変動による市場リスク算定基準を緩和する。
「長期保有株式」条項を新設
金融監督院が昨年末に公開したキックス最終案には、「株式リスク額は先進市場の上場株式、新興市場の上場株式、優先株、インフラ株式、長期保有株式、その他の株式などに区分して測定する」と明示されている。ここに「長期保有株式」条項を新設し、株価下落による衝撃水準を緩和する内容が盛り込まれた。
キックスでは、株式リスク額を株式リスクに直・間接的に露出した資産と債務を対象に測定する。長期保有株式の衝撃水準は株価が20%下落するシナリオに適用する。先進市場の上場株式に対して株価が35%下落するシナリオに適用するのを勘案すれば、衝撃水準が15%ほど低くなる効果がある。
先進市場の上場株式は、FTSE先進国指数に組み込まれた国の適格証券取引所に上場した普通株の株式を意味する。韓国株式市場も2009年にここに組み入れられた。
キックス最終案を見ると、長期保有株式集合は直接保有した先進市場上場株式で構成される。会社別に1個ずつ運営を制限する。保有株式を集合に組み入れるためには、原則的には売り渡さず、少なくとも10年以上保有する計画を立てなければならない。長期保有株式は、資産運用の柔軟性を考慮し、一定条件で売却が可能だ。
今回の改正は、保険会社の長期株式投資を活性化させるためと見られる。実際、金融監督院の金融統計情報システムによると、2020年末現在、運用資産全体に占める株式投資の割合は7%程度に止まっている。
金融監督院の保険リスク制度室の関係者は「ヨーロッパの保険会社に適用されているソルベンシー2(SolvencyII)に似た規定があり、参考にした」としながら、「保険会社が資本市場における機関投資家として長期株式を保有できるような環境を整えた」と述べた。
サムスン生命に注目
キックス改正案が公開されると、保険業界の視線はサムスングループに集まった。サムスン生命やサムスン火災は、サムスングループの支配構造上、運用資産全体に占めるサムスン電子株の割合が高いためだ。
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特にサムスン生命の関係会社株式の割合は15.2%(42兆ウォン)に達する。サムスン生命やサムスン火災が保有しているサムスン電子の持分比率は、それぞれ8.51%と1.49%だ。
ただ、実際、サムスンの保険各社が長期保有株の集合にサムスン電子の株を組み入れるかどうかはまだ分からない。いわゆる「サムスン生命法」と呼ばれる保険業法の改正に伴う持株の売却などが変数として働く可能性があるためだ。
キックスの最終案には、長期保有株式集合内株式の平均保有期間が5年未満になる場合、長期保有株式集合が解除される。この場合、長期保有株式集合の再設定を行うことができない。
サムスン生命はキックスの導入まで1年が残っているので、キックスの長期保有株式の組み入れる条件や期待効果などを十分検討し、議論を進める計画だ。
ユ・ジョンファ記者