青年たちに「借金」だけを教える韓国社会

韓国の青年層は、国内の他の年齢層に比べて資産・所得が低く、借金の負担が大きい。また、新型コロナウイルス事態の長期化により、相対的に深刻な雇用危機に直面している。さらに、多くの若者が住居費、教育費、生活費負担による不安心理から過度なレバレッジ投資に走るなど、社会問題が顕在化している。

ヨンクル・ピットゥで延滞の沼…2030世代の現在

実際、韓国の青年層の負債増加速度は他の年齢層に比べて速い。この5年間(2017~2021年)の統計庁の家計金融福祉調査によると、30歳未満の世帯主の平均負債保有額は2017年の2393万ウォンから毎年増加し、昨年には3550万ウォンと集計された。

特に20代の場合、金融負債の規模自体は他の年齢層より低い水準にある。しかし、その増加速度が非常に速い上に、全年齢層平均より貯蓄額や家賃保証金など担保資産も少ないことが分かった。

問題は、2020年の証券・仮想通貨市場の活況をきっかけに、借金をしてまで危険資産投資に乗り出す若者が大きく増えたということだ。

昨年上半期、証券会社の2030世代信用取引融資の新規融資額は38兆7453億ウォンで、昨年の全信用融資額57兆639億ウォンの67%超だ。

保有資産規模が相対的に小さい青年層が、新型コロナウイルス局面を資産増殖の機会と考える雰囲気が広がり、非対面口座開設、モバイル取引、委託売買手数料引き下げなど株式取引の接近性と利便性が向上した環境もこれを促進した。

日増しに増える借金の山に、青年層の信用リスクも高まっている。市場金利が高止まりし、借金返済の圧迫が増大した。

韓国銀行(中央銀行)が発刊した「金融安定状況報告書」を見ると、青年層の脆弱(ぜいじゃく)借主の延滞率は昨年第1四半期末5.0%から第4四半期末5.8%に上昇した。脆弱借主とは、多重債務者(3社以上の金融機関から借入)でありながら、低所得(所得下位30%)または低信用(信用点数664点以下)である借主のことを意味する。

他の年齢層の脆弱借主の延滞率は同期間に6.2%から5.5%に減ったのに比べ、不健全性の危険が青年層に集中していることが分かる。

韓国金融研究院(KIF)のキム・ドンファン先任研究委員は、「若者らは、いわゆる『ヨンクル』や『ピットゥ』に代表される借入に基づく不動産投資案件などが、資産市場のブームアンドバスト(過熱と破裂)サイクルにはまった場合、負債返済能力が低下したり債務不履行状態に陥ったりする可能性が高い」と指摘した。

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講座開設、遅々として進まず

若者が健全な金融生活を送るためには、金融商品に対する理解と負債・信用管理、年金、保険、金融消費者保護制度など実生活に役立つ知識を持っていることが望ましい。

しかし、高校卒業と同時にクレジットカードの使用、学資金融資など実質的な金融取引を始める反面、実際の生活に必要な体系的な金融教育を受ける機会は多くない。融資など金融関連情報を周囲の人々やインターネット、テレビ広告などを通じて限られた範囲で習得するのが現実だ。

金融監督院が2020年、韓国の成人(満18歳~79歳)2400人を対象に実施した全国民金融理解力調査によると、調査回答者のうち金融・経済教育を受けた経験のある青年層は33.7%に過ぎない。

特に、韓国青年層の金融態度(現在より未来に備えるための意識構造)の点数は34.4点でOECD平均(47.3点)を大きく下回った。

また、金融・経済教育受講経験者の金融理解力が無経験者より相対的に高く、金融知識や金融行為部門でも良好な結果を出した。これに対し、若年層の脆弱な金融態度を改善するためには、早期金融・経済教育の強化が切実だという指摘が出ている。

金融監督院は若者の正しい金融習慣の形成と社会進出以前に実用金融知識を育成するため、2016年に「大学実用金融」講座支援プログラムを導入した。6年余りが過ぎた現在まで運営を続けているが、活性化されず依然として停滞している。

金融監督院は該当プログラムを通じ、1回限りの教育にとどまらない実用金融講座が多く開設されるよう、提携大学に直接開発した教材と講師を支援している。また、金融監督院内の人材開発院に「大学金融教育教授要員研修課程」を開設し、業務経験の豊富な副局長級以上の職員を選抜し、専門講師の育成にも努めている。

金融監督院はプログラム導入当時、1年以内に100大学、5年以内に300大学に講座開設を目標にしていたが、昨年(2学期基準)、大学実用金融講座を開設した大学は89校に過ぎない。

韓国金融教育院の関係者は、「金融教育の重要性が大きくなり、金融機関も社会貢献のレベルで民間機関と協力して金融教育支援を増やしているが、彼らの教育態度は一般的な実用知識よりは将来の消費者として接する傾向がある」とし、「非営利目的の主体が金融教育支援に積極的に乗り出すべき理由だ」と説明した。

さらに、「金融教育を受講しようとする学生たちの需要が途切れないようにするためには、非教科(無単位)講座での教材の支給にとどまらず、出席義務のある教養・専攻科目として開設するのがより効果的だ」と付け加えた。

また、この関係者は「しかし、16週間の講義に出欠管理、行政業務まで専門講師の日程を金融監督院の職員が受け持つためには業務が倍に増える。人件費には限界があるし、個人的キャリア管理にもあまり役立たないと判断し、金融教育に乗り出そうとする職員が少ないのが現状だ」と指摘した。

理論教育に偏り

金融監督院は消費者の金融力量強化のため、金融教育の伝達方式を多様化し、プログラムの充実に力を注ぐ方針だ。

まず、高校単位制などが導入される今年の改正教育課程(今年下半期の告示、2025年から適用予定)で、アメリカ、イギリスなどの海外事例を参考にし、関連教科に実生活と連携して金融力量を高めることにも取り組む予定だ。

現行の小・中等教科で金融部分は社会や技術、家庭などに含められており、比重が高くない状況だ。これを受け、金融監督院は「金融と経済生活」科目内に教育コンテンツ(科目構成、教授・学習資料など)を大幅に補強し、将来、金融業界への就職を希望する学生の深化学習ができるよう改善し、金融科目を選択しない一般学生のためには、共通科目である「統合社会」科目の金融教育をさらに充実させる作業を推進する。

来年末からは金融教育政策の樹立で民間専門家らの参画をより活性化し、地域別金融教育ネットワークを強化するなど、金融教育の推進体系を充実させる計画だ。

金融監督院の関係者は、「青年層を中心とした『ヨンクル』、『ピットゥ』などによる投資によって、家計債務問題まで深刻化する側面がある。金融教育を通じて消費者の資産形成と老後への備えを支援することが緊要な時期だ」としながら、「教育部と企財部、各種金融協会など家計省庁および関連機関とともに、今年まとめた金融教育強化策の細部課題を段階的に推進していく」と述べた。

一方、現場の反応はやや冷たい。青年たちの実用金融力量を育てるためには実戦対応能力を育てることが重要だが、現在の方向は実質的な金融生活よりは理論に対する概念確立に偏っているということだ。

大学で金融教育を専門とするある講師は、「経済や経営系や金融圏の就職準備生を除いては、漠然と『金融は難しい』と考え、遠ざけようとする学生が少なくない。そのため、融資金やカード代金を返済できず、債務不履行者になったり、金融犯罪のターゲットになったりして大きな被害を受けるケースも発生する」と話した。

同氏は「最近、金融とITが結合した多様なフィンテックサービスが出現しており、既存の金融方式では理解しできない新しい投資対象や手法が注目を集めるなど、金融市場は日々変化する」とし、「急変する金融時代に賢明な金融意思決定を行うためには、金融商品原理などの理論的アプローチよりは実用的かつ時宜性のある金融知識と情報が必要だ」と述べた。

アン・ソユン記者