韓国の家計貸付需要、地方銀行に流入
韓国政府の強力な家計債務の締め付けを受け、都市銀行の融資枠が急激に狭まり、地方銀行に需要が移転する「風船効果」が起きている。
韓国の地方銀行の家計貸付の取り扱い拡大は収益性の改善に役立つものの、中小企業向け融資の義務比率制度により、身動きの幅が狭まりかねないという見方も出ている。
中小企業融資にマイナスも
今年上半期、慶南(キョンナム)銀行の家計貸付の伸び率は11.8%、釜山(ブサン)銀行は9.9%、大邱(テグ)銀行は6.6%を記録した。新たな中金利融資商品の発売で13.8%の増加率を記録したカカオバンクに続き、韓国の銀行圏の家計貸付増加率の順位2位から4位までを、すべて地方銀行が占めた。
地方銀行の家計貸付の取扱額が急激に増えた理由は、都市銀行が政府の強力な家計貸付総量管理規制に合わせて、融資の引き締めを始めたからだ。
これらの都市銀行は、融資取り扱い目標値の超過による暫定措置として、マイナス通帳など信用融資の限度を大幅に減らし、金利を引き上げた。一部の都市銀行では、新規の住宅ローンや伝貰(チョンセ)ローンの取り扱いを一時中止するなど、強硬措置を取った。
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一方、地方銀行は家計貸付を扱う割合が少なく、政府の規制を避けることができた。第一四半期末には慶南、釜山、大邱の各銀行の融資残高に占める家計貸付の割合は平均32%で、都市銀行(同50%)と比べて規制の影響から相対的に自由だ。
地域の中小企業融資の多い地方銀行の立場では、家計貸付は健全性や収益性の側面で肯定的な効果が期待できる。
しかしこうした現象が、企業金融や受信(預金)などと均等な成長を基盤にした収益の多角化として起きているのではなく、都市銀行が抱えきれない需要を肩代わりしているに過ぎないだけに、負担が大きいという懸念も出ている。
義務比率、長期にわたり未達
家計貸付の取り扱い急増で最も気になる部分は、中小企業融資の義務比率の遵守だ。
中小企業の義務比率とは、中小企業への金融支援を円滑化させるため、銀行のウォン貨融資の増加額の一定比率以上を中小企業融資に当てるよ政府が強制したもので、地方銀行は60%以上の比率を維持するよう義務付けられている。
この比率を守らなければ、未達金額の50%まで、韓国銀行(中央銀行)の金融仲介支援融資(低利で活用できる中小企業融資の財源)限度を1カ月間、低減される。同時に、中小企業融資の比率を遵守した銀行に対しては、未遵守銀行から低減した限度額の発生分を超過達成金額の100%範囲内で再配分している。
韓国銀行によると、最近の地方銀行の平均遵守比率は50%台で、2008年のグローバル金融危機が始まる前の水準に近づいた後、再び下落する傾向を見せている。
金融危機の後、銀行別の中小企業融資の割合のギャップが相当部分、埋まったにも関わらず、大半の銀行が金融危機前の水準を回復できずにいる。さらに、融資規制の風船効果で家計貸付が急激に増えることになれば、義務比率を満たすのがさらに難しくなるだろうという見方も出ている。
これを受け、金融圏の一部からは、地方銀行の資金供給機能を活かすため、中小企業融資の義務比率制度を緩和すべきだという指摘が出ている。
金融経済研究所のカン・ダヨン研究委員は先月19日、「地方銀行の活性化方案準備」をテーマに開催された国会討論会で「中小企業融資の義務比率を現行の60%から縮小する必要がある」としながら、「義務比率を満たした場合は具体的なインセンティブを付与し、融資比率のポートフォリオを一定の範囲で銀行が自律的に決められるようにしなければならない」と述べた。
地方銀行のある関係者は「地方銀行は長期間にわたって義務比率を遵守できておらず、ペナルティ(金融仲介支援融資限度の低減)の規模もすでに都市銀行の10倍以上に達している」と話した。
また、「都市銀行の融資引き締めによる家計貸付の反射利益を期待する一方、耐えなければならない負担もある」とし、「家計貸付の増加傾向を注視し、今年下半期には信用融資限度制限など都市銀行のような自主的な管理に入る」と付け加えた。
アン・ソユン記者