韓国で住宅金融支援機構の健全性に懸念

本格的な金利引き上げ期を迎え、低金利・固定金利のメリットがある政策モーゲージに金融消費者の関心が集まる中、不況と不動産市場の萎縮による住宅ローンの不良債権化の兆しも見え始め、政策モーゲージの供給主体である韓国住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の健全性低下に対する懸念が高まっている。

「低金利・長期固定」にリスク

住宅金融統計システムによると、韓国住宅金融支援機構は2004年に設立されて以来、合計332兆ウォン規模の政策モーゲージを供給した。住宅ローンは17年間で198兆4056億ウォンが、2012年から扱った適格融資は133兆2328億ウォンが販売された。

政府から保証を受ける政策モーゲージは、銀行で販売する一般の住宅ローンより低金利・長期(10~40年)で利用できる。

急な基準金利引き上げ基調は、貸出の満期まで金利が固定される政策モーゲージに対する関心を高めていく。

住宅金融支援機構が今年第3四半期の実行分から中途償還手数料率を従来の最高1.2%から0.9%に引き下げ、銀行が固定金利融資の比重を拡大することにより、政策モーゲージの人気は続く見込みだ。

ただし、住宅金融支援機構の住宅ローン市場掌握をめぐり、一角では懸念を表す声が出ている。

債務調整が4割増

金融当局の監督規定によると、住宅金融支援機構は資本適正性基準である核心資本比率を6%以上維持しなければならない。これが破られた場合、経営改善措置命令を受けることになる。

核心資本比率とは、核心資本をリスクアセット(RWA)で割った値をいう。核心資本比率の項目には資本金、利益剰余金、資本余剰金、資本調整、その他の包括損益累計額が入る。リスクアセットは信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスクの合計である。

住宅金融支援機構の核心資本比率は、今年3月末に7.72%で、国際決済銀行(BIS)規制であるバーゼルIIIが反映され始めた2020年8月末の8.33%より0.61%ポイント下落した。

バーゼルIII導入前にバーゼルII基準で算定した時は、6.2%台でマジノ線に近かっただけに、健全性を引き上げるタイトな管理が必要な状況だ。

問題は、新型コロナ事態の長期化とロシア・ウクライナ戦争による世界的なインフレの影響で、家計債務の不良債権化の危険が膨らみ続けているということだ。金利引き上げ期の不動産市場の萎縮による住宅価格の下落の兆しも住宅ローンに否定的な要因だ。

実際、今年第1四半期の住宅ローン債務調整件数は1091件で、昨年の同じ期間に比べて41.3%増加した。

住宅金融支援機構の健全性低下は、政策モーゲージ供給のために発行した不動産担保証券(MBS)にも打撃を与える可能性がある。MBSは銀行など金融会社が住宅資金を融資した後、取得した住宅抵当債権を基礎資産として発行する流動化証券である。

金融圏のある関係者は「2008年のグローバル金融危機は、当時アメリカの大手住宅ローン会社だったペニーマとフレディマックに対し、国策住宅担保ローンの不良債権化によるMBS返済要求が殺到したことで生じた流動性問題に触発された」と述べた。

続けて「資産ポートフォリオが分散された銀行とは異なり、政策モーゲージに傾斜した住宅金融支援機構は、家計債務の不良債権化が深まると大きな打撃が避けられない」とし、「政策モーゲージの絶対的な規模が大きくなっている中、長期的な観点で健全性を高めるためには融資条件を強化するなど、運営改善策が必要と思われる」と付け加えた。

アン・ソユン記者