韓国ウリィ金融の会長選出に「禅譲人事」の懸念
韓国のウリィ金融持株で、次期会長を選出する役員候補推薦委員会が、孫泰升(ソン・テスン)会長やウリィ銀行のイ・ウォンドク頭取ら特定候補に肩入れしているとして議論を呼んでいる。
ファンド問題・巨額横領の渦中で
持続的な成長に向けガバナンスの改善が急務とされる中、人的資源の刷新を成し遂げるためには、公明正大な人事基準づくりが優先されなければならないとの指摘が出ている。
ウリィ金融持株の役員候補推薦委員会は最近、人事コンサルティング会社2社に金融会社の最高経営責任者(CEO)あるいはそれに準ずる経歴を持った人材のリストを要求したとされる。
同委員会は孫泰升会長の任期満了(3月25日)に向け、今月18日に最初の会議を開き、1次候補群を選定する予定だ。候補群には2つのコンサルティング会社からそれぞれ5人ずつ候補者を推薦させ、重複を除き10人のリストを作る。
ウリィ金融持株は近年、販売を担ったファンド商品の大規模な償還停止問題や職員による巨額横領などで世論から大きな非難を浴びた。それだけに、内部統制の改善が急務となっており、金融圏内外では次期会長について、組織の安定化とシステムの再整備に力量を発揮できる内部人材の就任が有力と見られている。
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具体的にはイ・ウォンドク氏のほか、ウリィ金融持株のパク・ファジェ事業支援総括社長、ナム・ギミョンとチャン・アンホの両元ウリィ銀行副頭取らが下馬評に上がったが、役員候補推薦委員会が提示したCEOの経歴条件を満たすとなると、対象者が大幅に絞られる。
後継者のライバル「粛清」
パク・ファジェ氏と2人の元副頭取らは、核心部署を束ねてきた実力者として評価されるが、金融会社の代表を務めた履歴はない。
金融圏の一角では、役員候補推薦委員会がこうした条件を示したのは、再任に挑戦するか否かを明らかにしていない孫泰升会長と、彼の腹心であるイ・ウォンドク頭取を優位に立たせるためではないかとの憶測が出ている。
韓国の金融グループのトップ人事を巡っては、現会長の「直系」と見なされる幹部にほぼ無風でバトンが渡される「世襲」にも似た禅譲人事がまかり通っているとして、当局や世論から懸念を持たれている。
昨年、会長が交代したハナ金融持株もそうした例のひとつだ。
会長の年齢上限を70歳までと定めた内部規範に従い、10年間の長期執権の末に退いた金正泰(キム・ジョンテ)前会長は、最側近の咸泳周(ハム・ヨンジュ)前副会長に禅譲するため、咸氏のライバルとなり得る幹部らを様々な名分により粛清したとも囁かれる。
金氏は会長退任後も、顧問としてハナ金融の経営に影響力を残している。
ある金融会社の関係者は「権力者が特定の人物を後任として内定させ、競争相手を整理する方式の継承は、企業価値の観点から無益だ。金融持株の会長らに対しては、強大な人事権を武器として、財閥の総帥のように振舞っているとの指摘が出ている」とし、「金融持株の競争力を損なう禅譲人事は、正すべき悪弊だ」だと指摘した。
アン・ソユン記者