サムスン電子「大株主」の生保、保有リスクが50%増
韓国で2023年から、保険会社の保険金支払余力の算定基準が変更されるのを受けて、サムスン電子株を大量に保有するサムスン生命の健全性に対するリスク評価が大きく変動する見通しだ。
サムスン生命のサムスン電子株保有は、グループの支配構造に直結していることもあり、今後の動向が注目される。
韓国では2023年から、新しい支払余力基準であるK-ICS(キックス)が導入される。現行基準のRBCでは、保険会社が保有する資産のうち、株式は保有額の8~12%が危険資産として算定される。これに対してキックスでは、株式保有額の35~48%の株価下落リスクが織り込まれる。
ただ、金融監督院の関係者によると、「保険会社ごとにどのようにリスクを分散するかによって、保有株式に対するリスク評価は変動する。上場株式に対するリスク係数は実質的には35%ではなく、12~14%ぐらいで適用される。RBCと比べ、リスクが1.5倍ほど大きく算定される見込み」だという。
そもそも、保険業界では従来から、株式は危険資産と見なされてきた。韓国の主要生保の今年第2四半期における保有状況を見ると、運用資産全体に占める株式の比率はハンファ生命が3.4%、教保生命が1.9%、東洋生命が1.4%と、いずれも1ケタ前半の水準だ。
これに対してサムスン生命は16.8%(46兆1370億ウォン)と図抜けており、その大部分が関係会社株(15.8%=43兆ウォン)だ。中でも保有額が大きいのがサムスン電子株で、同社発行済株式の8.51%に当たる5億816万株を保有している。
そのため必然、サムスン生命の資産構成はサムスン電子の株価変動から大きな影響を受ける。昨年6月末に5万2800ウォンだったサムスン電子の株価は、今年6月末には8万700ウォンまで上昇した。これを受け、サムスン生命の運用資産に株式が占める比率は12.1%から4.7%も増えた。
キックス導入を控え、各生保は運用資産に対する株式の比率を下げる動きを見せている。例えば東洋生命は先月、保有していたウリ金融ホールディングスの株式全量(2704万株)を売却した。売却代金は長期債の購入に振り向けられると見られている。
その一方、サムスン生命がサムスン電子の持ち分を大きく減らす可能性は高くなさそうだ。
サムスングループは、主力企業であるサムスン電子の株をサムスン生命とサムスン物産が大量に保有。さらに、創業家出身の実質トップである李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が、生命・物産の筆頭株主となることで、グループの支配権を握る構造になっている。
ただ、国会では依然として「サムスン生命法案」が継続審議となっており、予断を許さない。
サムスン生命法案とは、昨年6月に与党・共に民主党の朴用鎮(パク・ヨンジン)議員と李龍雨(イ・ヨンウ)議員がそれぞれ代表発議した保険業法改正案を意味する。同改正案は運用資産に対する比率が3%を超過する系列会社の株式を、5年以内に解消するよう強制する内容を含んでいる。
現時点の数字で例えて言うと、サムスン生命は総資産の3%に当たる10兆970億ウォンを超過する系列会社の持分は保有できないことになり、現在保有しているサムスン電子株の8.51%のうち、5.51%以上を売却しなければならなくなる。
他方、サムスン生命はキックスに合わせて資産のリスク評価を調整するよりも、サムスン電子株を持ち続けた方が、得られる実益は大きいとの意見も多い。サムスン生命は今年上半期、1兆2210億ウォンの当期純利益を上げたが、このうち約8020億ウォンがサムスン電子の特別配当金だった。また、サムスン生命はRBCも332%前後と良好で、キックスが導入されても株式危険額の財務健全性に及ぼす影響は大きくなさそうだ。
ある保険業界の関係者は「サムスン生命はサムスン電子株の売却代金で長期債確保に出ることもあり得るが、すでに資本余力が他の保険会社より十分な状況だ。むしろ債券に投資するより配当利益確保を通じて安定的な収益を得る方が有利だ」と語る。
ユ・ジョンファ記者