[記者手帳]「自発的な低信用」を煽る韓国政府
2022年2月4日
「年齢さえ条件に合えば低金利で1000万ウォンずつ貸してくれるのに、誰が自分の信用レベルに気を使いますか?」
先月27日、京畿道(キョンギド)主催で開かれた「青年基本金融事業予備説明会」に出席した銀行圏の関係者が言った言葉だ。
京畿道は現在、20~30代の住民なら所得や資産、信用レベルを問わず、1000万ウォン限度のマイナス通帳を10~20年間、低利で利用できる「青年基本融資」の実施を準備中だ。
次期大統領選の与党候補・李在明(イ・ジェミョン)前道知事が在任時に公約として打ち出した政策金融商品の一つだ。同候補が大統領に当選すれば、全国に広がる可能性が高いと予想されている。
しかし、韓国の銀行圏は青年基本融資に反発している。事業初年度に1兆ウォン、2026年までに3兆ウォンで計画された財源調達から、政府予算が底をついた際に現れうる不健全性問題まで、早くから頭を悩ませている。
何より返済能力が不確実な借主に対し、審査なしにお金を貸すのは金融市場運営の原則に反する行為だ。さらに、金融取引の経験が少ない若者が信用管理の必要性を認知するのを阻害し、放置させる最悪の道しるべになりかねないと懸念の声が高まっている。
実際、融資の根幹である信用評価機能が瓦解した政策金融が、副作用を招いた前例もある。
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昨年初め、中小ベンチャー企業部は新型コロナウイルス事態を受け、売上の減少による被害を受けた低信用者(信用格付け744点以下)の小規模事業者への金融支援を名目に、先着14万人に年1%台の超低金利で1000万ウォンまで支給する「希望の融資」を実施した。
ただし、高信用の小規模事業者も新型コロナウイルスの打撃を受けたのは同じだ。よって、さまざまな小規模事業者のミュニティでは、希望融資を受けるため、故意に融資を返済せずに延滞したり、
第2金融圏から融資を受けた後、申し込みの撤回権を行使したりするなど、わざと信用格付けを下げる方法が共有された。
中小ベンチャー企業部は、一歩遅れて中信用以上の小規模事業者のための「希望融資プラス」を出して収拾に乗り出した。韓国政府が自発的に低信用の小規模事業者を量産してしまったことは、もはや取り返しのつかない過ちとなった。
また、中信用融資の比重を増やせとの金融当局の注文に合わせ、ネット銀行は「一般非常金融資」の取り扱いを中断し、中信用非常金融資については1カ月分の利子を免除してまで普及に積極的な態度を見せた。これもまた、信用管理に神経を使ってきた金融消費者をがっかりさせている。
金融不均衡の問題を解消するため、融資に苦しんでいるシンファイラー(ThinFiler)に合理的な信用格付を受けられる機会を広げることと、ハードルを低くしてしまうことは全く違う行動だ。
それだけでなく、金融機関も中・低信用者に背を向けるのではなく、むしろ新しい市場として注目し、信用格付体系の弱点を補うために非金融データの確保に力を入れている。
こうした状況で、無条件に中・低信用社の融資取扱額の拡大だけを強行するのは、かえって民間金融の機能とその役割を無力化する悪手になり得る。
趣旨が良いという理由だけで、信用中心の金融市場の秩序を歪曲することはできない。
韓国政府はこれ以上、包容金融を理由に、高信用者への逆差別やモラルハザードを生む過ちを犯さないことを願う。
アン・ソユン記者