「政策のリスクを民間が負うのか」韓国金融界、信用赦免に複雑な心境

新型コロナウイルスの拡大期間に借入の返済を延滞していた債務者に対し、延滞記録をなくす「信用赦免」が始まった。

やむなき危機的状況の中、債務を誠実に返済した人々が、融資制限などの不利益を受けないようにするためだ。しかし、一部では「適当に伏せておこう」という程度の措置ではないかという不満の声が出ている。

新たな借金に誘うリスク

韓国政府の金融委員会の旗振りの下、韓国信用情報院や金融協会、中央会、信用情報(CB)会社など計20機関は、昨年1月から今年8月まで2000万ウォン以下の債務を返済できなかった個人・個人事業主のうち、年末までに延滞分の全額を返済した人に限って延滞履歴情報を共有しない措置を12日から施行した。これにより、当該履歴は信用評価に反映されないことになる。

これは新型コロナウイルス事態の発生で困難に直面している個人と個人事業主に対する信用回復支援策として、今年8月に金融業界が共同で「新型コロナウイルス信用回復支援協約」を締結したことによるものだ。

今回の信用回復支援措置により、今年9月末現在、個人債務者約206万人の信用点数と個人事業主16万3000人の信用評価が上方修正されることが予想される。支援対象者は別途の申請手続きなしに、自動的に信用点数と信用格付けが調整される。

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信用情報院の関係者は「支援対象者のクレジットカード発給と新規借入など、金融アクセスがより向上するものと期待する」としながら、「支援対象の延滞解消の期間が年末までということを考えると、支援対象者の規模は増加するものとみられる」と述べた。

銀行間で「ババ抜き」

ただ、各銀行は少し負担を感じている。支援策の狙いは良いが、延滞記録を削除された人が、再び無理をして融資を受けかねないという懸念があるからだ。「政府の主導で行われている政策のリスクを、民間が負うのか」との不満の声も少なくない。

銀行圏のある関係者は「融資を出す銀行が需要者の延滞記録を見られないようにするのは、時限爆弾の秒針が見えないように目隠しするのと同じだ」とし、「外形上、信用点数が上がったからといって、未回収の可能性が減るわけではない。延滞が当行の融資だったなら内部のデータベースで確認され、追加融資の承認ができない。結局、延滞記録を見られないほかの銀行の間で『ババ抜き』が行われる」と述べた。

さらに、「厳しい環境の中でも誠実に債務を返済し、信用管理をしてきた借主にとっては、今回の信用赦免措置が逆差別的に感じられるかもしれない」と付け加えた。

「モラルハザードだ」

実際、ネット上の融資情報共有コミュニティなどにはすでに、信用回復支援を受けクレジットカードを申請したり、新規融資を受けたりして、その感想を共有する書き込みがあふれている。

あるコミュニティに書き込みをしたAさんは「信用赦免で短期延滞の履歴22件が削除された。すぐにクレジットカードが発給され、融資も申請した」とし、「本来なら門前払いだったはずなのに、余裕資金ができてよかった」と書き込んだ。

この書き込みには「賢明な消費を応援する」という肯定的な書き込みとともに、「延滞しないためにもがいた人々はバカか、モラルハザード政策だ」「新型コロナのせいでやむなく延滞した人もいるだろうが、無条件に延滞記録を消すのは不合理だ」などの反感を示す書き込みも掲載された。

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金融委員会の関係者は「今回の信用赦免支援は政府政策ではなく民間協約で行われた措置だ。金融業界で自律的に決めた」とし、「延滞記録の削除による副作用を最小化できるよう十分な協議を経て決定された内容である」と述べた。

アン・ソユン記者