韓国の電気自動車充電所…火事になっても「保険」はない
2022年3月7日
保険本来の役割は相互扶助によるセーフティネットの構築だ。特に、大きな社会的費用を発生させる巨大災害において、被害者に最低限の補償を支給できる仕組みは保険しかいない。国も、最小限の安全装置を用意するため、法的に企業が加入しなければならない義務保険を定めている。
しかし、韓国の実態は産業の発展速度に追いついていないようだ。
管轄省庁、対策作りせず
先月初め、釜山市の東莱(トンレ)区にあるアパートの団地内で、火災が発生した。電気自動車充電所で充電を終えて駐車してあった小型貨物電気自動車から、爆発とともに火の手が上がった。火災は50分以内に鎮火したが、周辺に駐車していた車4台や充電所、アパートの駐車場施設が全焼した。
昨年12月には、同市の機張(キジャン)郡のアパートの地下駐車場の電気自動車充電所で、電気自動車と充電器をつなぐコネクターが爆発する事故が起き、充電所のコネクターと車両のバッテリーが破損した。
韓国のアパートの駐車場に設置された電気自動車充電所で火事が発生した場合、誰が責任を負うのだろうか。
自動車の欠陥ならメーカーの責任だ。しかし、充電中に自動車から発生した火事の場合、車主や電気自動車メーカーとの紛争により、賠償までに長い時間がかかることもある。
充電器の問題であれば、施設を所有・使用・管理する電気自動車充電所が賠償主体となる。充電所が営利行為を目的にするからだ。釜山東莱区の充電所事故が大きな事故に拡大したなら、事業主の賠償能力しだいでは適切な被害補償が不可能になることもあり得た。
保険商品なく「無事を祈るしか」
保険業界によると、このような電気車充電所事故の際、被害者に賠償責任を果たす保険商品は皆無なのだ。関係法令である「エコ自動車法」で電気車充電所の運営事業者の保険加入を強制していないからだ。
ただし、上記事例と同じ場所にガソリンスタンドやLPG充電所があった場合、事業主が加入している保険を通じて被害者の救済が可能となる。
現在、韓国のガソリンスタンドやLPG充電所事業主は、それぞれ災害安全法や液化石油ガス法に定める災害安全義務保険、ガス事故賠償責任保険の加入が義務付けられている。対人ではそれぞれ1億5000万ウォンと8000万ウォンが限度で、対物では事故当たり10億ウォンと3億ウォンの限度で補償される。水素充電所も高圧ガス法に基づき、ガス事故賠償責任保険(対人8000万ウォン、対物3億ウォン)に必ず加入しなければならない。
問題は、電気自動車の普及や充電インフラの拡充を担当する環境部や企画財政部、産業通商資源部などのいかなる部署も、被害者補償への対策作りを議論していないことだ。
昨年6月末基準、韓国国内には計13万7000台の電気自動車が普及した。電気自動車充電所は112カ所に増え、急速充電器と緩速充電器はそれぞれ8000個、5万9000個が設置されている。
電気自動車の充電所は今後、急増する見通しだ。昨年7月、関係省庁が合同で進めた「革新成長ビック3推進会議」で、韓国政府は急速電気自動車充電所を2025年まで、現在のガソリンスタンド並みの1万2000カ所に増やすという計画を発表した。緩速充電器は、徒歩5分の生活圏を中心に50万個以上の構築を推進する。
まず、高速道路および国道サービスエリア、ガソリンスタンドLPG充電所、アパート駐車場など生活施設に密接した地域に設置される。火災など事故が発生した場合、大きな人命被害が発生する可能性が高い場所でもある。
もし、ガソリンスタンド内に設置された電気自動車充電所の火災がガソリン引火する場合、簡単に大事故につながる可能性がある。しかし、賠償主体である電気自動車充電所の事業主は、被害者に対する賠償をする保険商品が皆無であるため、事故が起きないことを祈るしかない。
ある保険業界の関係者は「電気自動車充電所の事業主の賠償力だけでは災害事故発生した際に、円滑な被害救済が行われない可能性がある。現在は、ガソリンスタンドやLPG充電所で発生した災害事故と補償の公平性も合わない状況だ」としながら「充電所事故の被害者に対する補償が円滑に行われるためには、充電事業者に対する賠償責任保険の導入が必要だ」と述べた。
パク・ヨンジュン記者