韓国銀行で相次ぐ横領事故…背景に「命令休暇制」の形骸化

ウリィ銀行で起きた600億ウォン余りの横領事件は、韓国銀行圏に衝撃を与えた。事件の背景には、金融当局が主導する管理監督体制が形骸化している実態があるとの指摘が出ている。

過去6年に平均18.6件発生

韓国の銀行では、横領や流用などの金銭事故を未然に防止するため「命令休暇制」を実施している。

「命令休暇制」は、現金または実物資産を取り扱う役職員に対し、予告なく休暇を命令し、当該職員が不在の間に会社側が取扱書類の点検などを行い、不正行為がなかったかを確認する制度だ。

銀行は資金取引業務、トレーディングおよび派生商品取引などの業務遂行職員、営業店の出納業務担当者および窓口業務担当者のうち、同一営業店で3年以上勤めた職員などに対して年1回以上の命令休暇と特命検査をするよう内規に定めている。

2000年代初め、銀行が自主的に導入して始まった制度だが、金融会社の不正遮断を強化する目的から金融監督院が2014年に制度化した。

当時、金融監督院は命令休暇制が徹底的に履行されるよう、銀行運営実態の適正性評価項目に金融事故予防機能を追加する方式で法令上の根拠を設けた。履行が不十分だと判断された金融機関には、制裁が下される。

2015年にKB国民銀行が命令休暇制の不適切運営で制裁を受けて以来、金融当局の制裁を受けた銀行はひとつもなかった。しかし、銀行員の横領事故は絶えず発生している。

「運用は容易でない」

国会政務委員会に所属する国民の力の尹暢賢(ユン・チャンヒョン)議員室によると、国内8行(新韓・KB国民・ハナ・ウリィ・企業・農協・産業・SC第一)では2016年から昨年までの6年間、年平均18.6件の横領・流用事故が発生した。

銀行別に見ると、ハナ銀行と農協銀行が22件で発生回数が最も多かった。金額(合計)基準ではハナ銀行が82億3000万ウォンで最も規模が大きく、△IBK企業銀行30億ウォン△農協銀行29億3000万ウォンの順だった。

最近、大型の横領事故が発生したウリィ銀行の場合、同期間に15件、27億3000万ウォンの横領・流用事故が発生した。

金融監督院の関係者は「詐欺・横領などの危険にさらされやすい職員に関する常時監視体系をきちんと整える必要がある」としながら、「命令休暇制のような抜き打ち検査を通じ、銀行が常に緊張しながら内部統制に気を使うように誘導する方針だ」と述べた。

一部では命令休暇制の実効性にも疑問が提起されている。現状は役職員の不正を根絶するためというより、制度上の義務として受け身で運用しているという意見もある。

ある都市銀行の関係者は、「命令休暇制を施行しているが、大半が定期休暇、研修などに合わせ慣例的に検査を実施している」としながら、「制度趣旨には共感するが、急に人材が抜けると業務に支障が生じかねず、現実的に適用するのは容易ではない」と述べた。

アン・ソユン記者