【記者手帳】「濡れ手に粟」の韓国金融当局…負担はカード会社に
中国に「坐享其成」という言葉がある。何もせずに他人の労働の成果だけを享受する、という意味だ。最近、韓国の金融圏でもこのような例がよく見られる。政府が相次いで政策を打ち出し、コストはカード会社が負うけど、それによる効果は金融当局の成果となっている。
金融委員会は10月、カード会社に対し、「ヘッサルロンカード」という宿題を出した。韓国語の「ヘッサル(陽ざし)」とローンカードを組み合わせた名称から察せられるとおり、低信用者のクレジットカードの利用を支援する商品だ。個人信用評点が下位10%の最低信用者が対象で、延滞のリスクはカード会社が負うことになるとの指摘が出ている。
このような懸念が高まると金融委は、ヘッサルロンカードは庶民金融振興院の保証を通じて発給されるので、カード会社に損はないと主張したこともある。しかし、延滞料に対する保証や健全性悪化に関する言及はなかった。
ヘッサルロンカードの利用者が決済金額を延滞するとカードの使用が中止され、延滞が3カ月続けば、カード会社は庶民金融振興院の弁済を受けることができる。だが、利用金額への弁済だけが行われ、延滞料は受け取れない可能性がある。返済しない利用者が続出すると、健全性悪化や引当金の積立はカード会社の役割となる。
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そのうえ、保証も事実上、カード会社の資金で行われる。金融委は10月から、家計向け融資の残高の0.03%を、政策庶民金融の財源として金融機関から集めている。つまり、カード会社は自分の金で最低信用者を保証することになる。
これに先立って、災害支援金などの政策金融を支援する際も、カード会社は赤字やコストを負わなければならなかった。無理な業務推進のせいで、政策施行が先送りにされたりもした。
共存消費支援金は、政府が8月に案をまとめ、9月から施行することをカード会社に要求した。しかし、具体的な加盟店の指定やシステム構築もできていなかった。カード会社が急いで作業に乗り出したが、電算の構築などの問題で開始は10月にズレ込んだ。
外食支援金も同じだ。詳細な準備無しに推進された政策のため、カード会社の業務は緊迫した。外食支援の事業は、終了時も問題があった。期間を満たさず予算が底をつき、政府は事業終了を通知。後の処理はカード会社の仕事になった。
相次ぐ政策的な犠牲に、カード会社は諦め顔だ。社会貢献事業の推進に反対すればイメージが傷つき、現実的ではない業務推進によって生じる苦情など、負担だけが加重されるからだ。
適切な補償があるわけでもない。今月末には、カード会社の加盟店手数料率の再算定作業は終わる。しかし、再び手数料率の引き下げが予想されている。加盟店手数料率の引き下げの名分も、零細加盟店であるほど手数料の負担を減らすという公益的な理由だ。
実際、韓国のカード会社は2007年から合計13回、手数料率を引き下げている。公益のために推進される政策でも、人的・物的資源が投入され、損失が発生するのならば、金融当局もたまにはアメを与えるのが妥当だ。ムチばかり振るわれていれば、残るのは傷だけだ。
パク・ジンヒョク記者