韓国不動産、DSR緩和でも流動性改善は未知数
韓国の金融圏では総負債元利金返済比率(DSR)規制が緩和されても、しばらくは不動産市場の流動性改善は期待しにくい状況だ。伝貰(チョンセ)取引とともに売買まで活性化するには、追加の調整が必要だという声が出ている。
9月「逆チョンセ難」到来控え
関係省庁によると、企画財政部(財務省)は7月上旬の「下半期経済政策の方向」の発表に際してDSR規制の緩和を検討している。家主がチョンセ保証金返還のための融資を申請した場合、この規制が適用されないようにするのが骨子だ。
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現行のDSR規制では、融資する時の元金と利子が債務者の年間所得の40%を超えないこととしている。これを一時的に緩和して「逆チョンセ難」リスクを縮小しようということである。
逆チョンセ難とは、チョンセ価格が売買価格より高くなる現象だ。2020年7月の「賃貸借2法」施行により、チョンセ価格が短期間に暴騰した一方、金利引き上げなどで売買価格が急落し、このような現象がもたらされた。
これにより、「ギャップ投資」で家を買った人々は、融資を受けて賃借人にチョンセ保証金を返すか、家を売らなければならない状況となっている。
しかも、9月には「逆チョンセ難」は一層深刻化する見通しだ。チョンセの契約期間は通常2年だが、チョンセ価格が最高を記録した2021年9月契約分が満期を迎えるからだ。
DSR規制が緩和されると、賃借人の転居自由度が増して、チョンセ取引量は増えると思われる。ただ、不動産市場全体の流動性が改善するかは未知数だ。
専門家たちは、売買が活性化するためにはDSRと共に住宅担保認定比率(LTV)も調整されるべきだとみている。
LTV(Loan To Value ratio)とは、住宅ローンの時に認められる担保価値の割合である。家屋を複数所有する多住宅者に対し、規制地域では30%、非規制地域では60%が適用されている。例えば、住宅ローンの担保比率が60%で、3億ウォンの住宅を担保にお金を借りたいなら、最大融資可能額は1億8000万ウォンだ。
京仁女子大・不動産学科のソ・インヒョン教授は「韓国の住宅売買構造は、融資など資金を巻き込んで購入する方式がほとんど」だとし、「LTV比率調整が売買需要を喚起するのに役立つ」と話した。
続けて「ただし、家計向け融資の増加、金融機関の不良債権増大などのリスクを考慮して、実需者や無住宅者に限って緩和されるべきだろう」と付け加えた。
イ・ヨンギョン記者