【独自】実損保険料引き上げの主犯「9つの原因」を食い止める
これから韓国では、実損医療保険の持続可能性を脅かす「9つの非給付」に対する保険金の給付基準が厳しくなる。一部加入者の過剰診療による加入者全体の保険料引き上げが、深刻な状況に達しているというのが、金融当局や保険業界の共通した判断だ。
実損医療保険は、患者が病院や薬局で実際に支払った医療費の最大90%を保障する保険商品だ。韓国では、加入者数が総人口の7割に達し、第2の健康保険とも呼ばれる
金融当局および保険業界が6日までに発表した資料によると、最近、実損保険の給付漏れタスクフォース(TF)では、実損保険金の支払漏れに深刻な影響を及ぼす問題である「非給付項目9つ」を指定し、保険金の支払い基準を見直している。昨年6月から、運営されたTFには金融監督院、生命保険協会、大手生命保険会社7社などが参加している。
これには◇白内障手術△甲状腺高周波切除術◇ハイプ(HIFU)△マンモトーム(Mammotome)△鼻弁再建術◇『ドス治療(※1)』△顎削り・O脚・脱毛◇非給与薬剤△再販売が可能な治療材料(皮膚保護剤)などが含まれている。
【注※1】「ドス治療」とは、直訳すると「素手治療」である。物理治療の一つで、直接手で行う施術(マッサージや整体など)のことを意味する。
現在、問題の非給付項目への対応策や事例などが、全ての保険会社で共有されている。意見収集を経て、近いうちに保険会社の独自審査基準に反映されると予想されている。
治療目的にそぐわない場合は追加審査
代表的な支払漏れ項目として指摘される白内障手術については、大韓眼科学会の「白内障診断および治療指針」に基づいて保険金を支払うかどうかを決める見通しだ。
病院が白内障かどうかについての客観的な検査資料の提出を拒否したり、検査資料の解像度を下げて白内障の判読自体を難しくしたりするなど、保険詐欺の蓋然性が高いケースについては追加審査を通じた強硬な対応が予想される。
甲状腺高周波切除術は、大韓甲状腺映像医学会の診療勧告案を基準に、2cm未満の結節について2回以上の検査・経過観察なしに手術した場合や、陽性結節の有無を確認する客観的な資料提出を拒否すると、追加審査の対象になる可能性がある。
実損保険にまん延しているモラルハザード(道徳的危険)を根絶できる審査基準も作られる。19歳未満、もしくは閉経以後の患者にハイプ施術をするか、鼻の整形を目的に耳鼻咽喉科ではなく、整形外科の診療を通じて鼻中隔形成術が行われる場合、保険金給付が断られる可能性もある。
ドス治療は産業災害補償保険の療養給与算定基準が参考になった。現行の労働者災害補償保険(労災保険)ではリハビリテーション医学科、整形外科、神経外科専門医が10分以上実施した時に限ってドス治療として認めている。また週3回以上、治療期間中に15回以上のドス治療を受けたとすれば、過剰診療と判断され得る。
実損保険では、いわゆる「MDクリーム」など皮膚保護剤を過度に処方してもらっても、保険金給付が断られるかも知れない。病院で購入できるMDクリームは、実損保険処理ができる。これを悪用して病院で大量のMDクリームを購入した後、中古取引プラットホームで再販売する現象の弊害が大きくなっている状況だ。
持続可能性の脅威
今年の実損保険料の引き上げ率は平均14.2%だ。これは昨年の引き上げ率(11%)より高い。
毎年、保険料を引き上げてはいるものの、大幅な赤字で実損保険の運営自体が厳しい状況だ。昨年、保険会社が実損保険で出した赤字だけで3兆6000億ウォン余りに達するものと予想される。代表的な原因は、支払われた保険金の大半が、一部加入者の過剰診療から始まったためだ。
一例として、昨年、白内障疾患と関連して損害保険会社が給付した実損保険金だけでも9330億ウォンにのぼる見込みだ。白内障関連で給付された実損保険金は、すでに昨年3四半期に2020年年間給付額(6378億ウォン)を上回った。実損保険は、保険料を払う人と保険金を受け取る人とが別々にいるのではないかという指摘が出る理由だ。
金融当局は過度な保険料引き上げは抑制する一方、保険金漏れを防ぐことに強い意志を示している。鄭恩甫(チョン・ウンボ)金融監督院長は昨年末、損害保険業界との懇談会で、「実損保険内の非給与の過剰医療の項目の保険金給付基準を整備すると明らかにしたりもした。
パク・ヨンジュン記者