韓国の銀行圏、企業向け融資が増加…返済負担が危険水域に

韓国の銀行圏が家計融資規制の強化による収益率の悪化を防ぐため、不良債権の雷管となりやすい企業向け融資の取り扱いをむやみに増やすという、悪手を打っている。

予想できない新型コロナウイルスの再拡散と、基準金利の引き上げ時期が重なり、借主の元利金の返済負担が危険水域に達しているとの指摘が出ている。

企業向け融資9%増

昨年第3四半期基準、4大都市銀行(KB国民、新韓、ハナ、ウリィ)の企業向け融資は545兆6350億ウォンで、2020年末(501兆4890億ウォン)に比べ44兆1460億ウォン、8.8%増加した。

特に、企業向け融資の中でも中小企業の融資需要が大幅に増えた。同期間、国民銀行の大企業向け融資と中小企業向け融資の増加率はそれぞれ5.64%と6.39%だった。

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新韓銀行の大企業向け融資はほとんど変わらなかった一方、中小企業への融資は10.67%増加した。ハナ銀行は1.02%と8.75%が増え、ウリィ銀行は8.42%と13.54%と、上げ幅が最も大きかった。

自営業者の資金需要が大企業に比べて相対的に多く、また、小規模事業者の元利金の返済猶予など、中小企業を対象にした「新型コロナウイルスの金融支援政策」を受け、融資が急激に増えた影響と見られる。

さらに昨年、金融当局が家計向け融資の年間増加率を5~6%台に設定する「6%ルール」が火に油を注いだ。雪だるま式に膨らんだ家計債務が潜在危険要因につながらないようにするための、苦肉の策だった。その結果、各銀行は融資ポートフォリオの構成において、企業向け融資を増やす経営戦略で対応した。

不健全化の雷管

銀行圏は、中小企業向け融資に集中する雰囲気が続くものと見ている。預貸マージン(預金金利と貸出金の差)が主な収入源の銀行が、これ以上、家計向け融資に依存できなくなったからだ。総量管理の必要のない企業向け融資の場合、銀行の裁量で融資パイを拡大することができる。

問題は、大企業よりも信用度や担保力が低く、外部環境の変化に脆弱(ぜいじゃく)な中小企業の融資需要が増加した点である。今年3月には、総額120兆ウォン規模の中小企業と小規模事業者に対する満期延長・返済猶予措置が終了する。これまで集計されなかった各種の不良負債が大幅に増え、銀行の健全性に悪影響を及ぼしかねないという懸念の声が出ている。

さらに、オミクロン株の拡散で、中小企業の経営回復は遅れていると観測されている。それに、利上げ期が到来し、借主が負担しなければならない元利金の規模もより大きくなるとの分析もある。韓国銀行(中央銀行)の推算によると、基準金利が0.5%上がれば借主の年間利子負担は2兆9000億ウォン増加する。

引当金と資本のジレンマ

これを意識したのか、各銀行も新型コロナウイルスの金融支援終了など、さまざまなリスクに備え、貸倒引当金を持続的に積み立てている。4大都市銀行の昨年第3四半期の貸倒引当金の積立率は164.24%で、2020年末(148.06%)に比べ16.18%増加した。

しかし、韓国政府の金融支援により隠された不健全性の規模を把握できない状況で、現在確保した引当金が危機に耐えられるレベルなのか疑問が提起されている。だからといって、各銀行もむやみに引当金を積み増すのは難しい。引当金は経費として処理され、資金を備蓄した分、当期純利益は減り、収益性に悪影響を及ぼすためだ。

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引当金が増加すれば、その分だけ純利益が減り、自己資本に影響を及ぼす。普通株資本を危険加重資産(RWA)で割って算出する普通株資本比率(CET1)は、銀行の資本健全性を測定する指標だ。比率が低いほど資本と配当余力が少ないと見なされる。

金融界のある関係者は「銀行が貸倒引当金を予想以上に積み立てる理由は、延滞した債権が多いと内部でも判断しているためだ」とし、「ただし、大規模な引当金の追加的な積立は資本負担につながる。総与信のうち0.7%を追加的に積み立てれば、これによる負担金は1兆8000億ウォンになり、普通株資本比率は0.5%下がることになる。中小企業の経営悪化の兆候などに対するモニタリングを綿密に調べる必要性がある」と述べた。

イ・ジウン記者