【創刊26周年企画】韓国政府の「二転三転」に貯蓄銀行は「右往左往」
[文政府の金融改革5年]庶民金融の「柱」から家計債務の「主犯」に
韓国政府による中金利融資の活性化政策の影響で、過去最高の業績を更新していた貯蓄銀行が困難な状況に置かれた。今年6月、金融監督院が貯蓄銀行に対し、家計向け融資の総量規制を適用してからだ。
中金利を中心に融資営業を拡大してきた貯蓄銀行は、家計向け融資の増加傾向の主犯となった。すでに増やした融資が原因で、一部の貯蓄銀行は損失を甘受して債券を売却するなど「融資を減らす作戦」に乗り出し、あるいは融資商品の販売を中断するなど、営業を縮小している状況だ。
中金利融資、過去最高の実績
2011年の貯蓄銀行事態後、各貯蓄銀行には「不良債権」「高金利」などのレッテルが貼られていた。しかし2016年、金融当局が中・低信用者の金利負担を下げる中金利融資活性化策を打ち出した。その後、文在寅政権がこの政策の先頭に立ってから、ここ数年で状況が反転した。
文在寅政権は100大国政課題の一つとして、「庶民の財産形成や金融支援の強化」を取り上げた。庶民・脆弱階層が体感できる実質的かつ持続可能な金融支援を強化するのが目的だった。そして、このための手段として、中金利融資の活性化が推進された。
2018年、当局は第2金融圏からの中金利融資を総量規制から除外するなど、中金利融資取り扱いのインセンティブを拡大した。また、今年5月には貯蓄銀行の中金利での事業者向け融資供給実績について、営業区域内の融資額を130%に加重して反映する計画を明らかにし、中金利を積極的に奨励した。
制度改善のおかげで、貯蓄銀行が庶民向け金融の窓口として浮上し、驚くほどの成長を続けた。2016年に52兆3495億ウォンだった貯蓄銀行の総資産は、今年上半期に102兆4384億ウォンまで増加し、規模が約2倍に増えた。
この間、中金利融資残高は急増した。2016年に6754億ウォンにすぎなかった貯蓄銀行の中金利融資残高は、昨年末の10兆3060億ウォンまで15倍以上に拡大した。
ところが、貯蓄銀行の我が世の春は長続きしなかった。金融当局が、従来は都市銀行だけに適用していた総量規制を、第2金融圏へと拡大したからだ。
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金融当局は今年6月、個人向け融資の増加が予想より急激に進むと、貯蓄銀行に対し、中金利融資を含む個人向け融資の増加率を前年比の21.1%以内に制限するよう注文した。今年上半期、貯蓄銀行の家計向け融資残高は36兆87億ウォンと、前年末(31兆5947億ウォン)比約5兆ウォン増えた。前年同期の増加額1兆7000億ウォンの約3倍の水準だ。
十把一絡げに批判
それでも増加の勢いが止まらず、9月、金融監督院はアキュオンやKB貯蓄銀行に対し、経営留意措置を適用し、家計向け融資の管理を要求した。金融委員会は同月、家計債務の点検会議にSBIや韓国投資、アキュオンの各貯蓄銀行を呼び、目標超過の事由や管理計画について確認した。本格的な「家計向け融資の締め付け」に乗り出したのだ。
金融当局の指針を受け、中金利融資の営業を拡大してきた貯蓄銀行は、困難な状況に置かれている。増加率を金融当局が示したレベルに合わせるため、損失を甘受して債券を売却する貯蓄銀行も現れている。SBI貯蓄銀行は今月、貸金会社などに個人再生や住宅担保債券などを譲渡した。OK貯蓄銀行も先月、個人再生や信用回復の債券の一部を売却し、ウェルカム貯蓄銀行は下半期2度に渡り、債券を売却した。
融資商品の取り扱いを中断するケースも続出している。CK貯蓄銀行は9月、信用融資や保証金資金、住宅ローン商品の販売を中止した。韓国投資貯蓄銀行も、賃貸マンションの担保融資を中止した。ウェルカム貯蓄銀行は第3四半期中にESG関連の新規商品を発売する予定だったが、計画を中断している状態だ。
十把一絡げ式の総量規制への不満も出ている。中小型貯蓄銀行の場合、従来の融資規模が小さく、融資が少し増えても伸び率の数値は大幅に上がる。今年上半期の家計向け融資の伸び率が21.1%を上回る貯蓄銀行17行のうち、総資産1兆ウォン未満の中小型貯蓄銀行は5行を数える。
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民国貯蓄銀行の今年上半期の家計向け融資残高は45億1400万ウォンと、前年(34億2600万ウォン)比10億ウォンほど増えたが、増加率は31.7%に達し、金融当局のガイドラインを上回った。
一方、業界最大手のSBI貯蓄銀行の今年上半期の家計向け融資残高は、計5兆7020億ウォンと、前年(5兆1059億ウォン)比約6000億ウォン増えたが、11.6%の増加率にとどまり、規制をクリアした。
現在、業界は総量規制から中金利の融資を除外するよう求めているが、不確実な状況だ。ある貯蓄銀行の関係者は「政府は中金利を拡大しろと言っていたのに、今は『なぜ増やしたのか』と聞いてくる。政策が着実に運用されてこそ、それに合わせて準備をし、計画を立てるのだが、意味がなくなった状況」と述べた。
パク・ジンヒョク記者